ブルーライトⅤ (ページ4)

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ポケットに入れていたスマホの画面を照らして時刻を目で読む。ちょうど２２時を過ぎたぐらい。あたし達はバスケットボールを一つ持って近くの大きな公園に来ていた。
つい数分前、家から呼び出したタクシーにゆうたくんと乗り込み「近くの大きい公園までお願いします」と言ったのだ。その時、運転手さんが一瞬ギョッとして何も言わずに出発したのが、YouTuber的には動画に残したかった反応だった。

「俺ら、ヤバい客だと思われたかな」

タクシーから降りて、隣を歩くゆうたくんが口角を上げる。

「あたしが運転手だったら同じ反応すると思う」

「この時間にタクシーで公園行く男女乗せるなんてそりゃビビるよね」

そう言って、外の空気を目一杯吸い込んだゆうたくんは「夜風が気持ちいい」と呟いた。
数日前に降った雨で公園の芝生はまだ湿っていたが、バスケットコートは既に乾いている。防犯のためか、青白い街灯に照らされたバスケのゴールは少しばかり不気味で、ヒートアップした感情を落ち着かせてくれるような気もした。

「動きにくい服で来ちゃった」

ボールを地面につきながら彼に言えば、ゆうたくんは興奮したように笑顔を見せる。

「お、やっぱ上手いね」

「ドリブルしてるだけだよ」

少し捻くれた返事をしつつも褒められると嬉しい。ともやんくんと一度バスケをしたからか、人前でボールを触ることへの抵抗感が前よりも薄くなっている気がした。

「バスケやってた人の手付きって感じ」

「ゆうたくんもこれぐらい出来るじゃん」

言いながらシュートを放つ。ボールはポスッと軽い音を立ててゴールに吸い込まれた。それを見て、子供みたいな顔をしたゆうたくんは頬を綻ばせる。

「すげー、なんか俺も楽しくなってきた」

思ったことをそのまま口にするゆうたくんに笑ったあたしは、拾ったボールをパスした。すると彼は受け取った勢いそのままボールを手から滑らせるようにゴールへ打つ。綺麗な弧を描いたボールはリングの縁をくるりとなぞってリングネットの中に入った。

「一発で入ると気持ちいいよなぁ」

あたしにグーサインを出して満足気にボールを拾いに行くゆうたくん。あたしを元気付けようとしてくれているのかなと、その背中を見て思う。体勢を整えて、もう一度シュートを放とうとした彼に尋ねた。

「やまとくん、怒ってた？」

フリースローラインから打たれたボールは、バックボードに強くぶつかり大きく跳ね返る。そして地面にバウンドして転がった。