ブルーライトⅤ (ページ19)

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綾ちゃんの運転で、行きつけの個室サウナに辿り着いたあたし達。車から降りたあたしは駐車場にあった見覚えのある車を見てギョッとする。

「あ、コムドットの車に似てるね」

真っ黒の大きなミニバンを指差し、能天気にそう言ったのはとうあだ。

「ほんとだー、やまとくん達も来てんじゃん？」

車の鍵を閉めた綾ちゃんも気にしてない様子でそう言ったが、あたしは面白いぐらい動揺が顔に出ていたらしくそれを見た綾ちゃんが同じように表情を引き攣らせた。

「なに？顔怖いよ、A」

「いや…コムドット……」

何回も乗ったことのある車のナンバープレートだ、流石に覚えている。並ぶ数字を三度ほど読んで、辺りをキョロキョロと見渡すあたしに綾ちゃん達は何が面白いのか今度はケラケラと笑いだす。

「キモいからやめなよ！実は熱狂的なファンなの？」

今からサウナに入れる高揚感からか彼女達は一層楽しそうだが、あたしはあの車を見つけたせいでそんなテンションではなくなった。怪しさ満点で彼等の姿がないかを探す。

「いや、元々はファンだけど……てかそういう問題じゃなくて今コムドットに会うと気まずいの…！」

「誰に会うのが気まずいの？」

そう言ったのは綾ちゃんでもとうあでもない。すぅと夜の冷えた空気を裂くように、真上から聞こえた低い声にあたしは肩をびくりと持ち上げ後ろを振り返った。

「きゃーーーー！！」

しかし叫んだのもあたしじゃない。声が聞こえた方を振り向いて絶叫したのは、やっぱり綾ちゃんだった。

「びっくりした！なに、怖いんだけど！」

「ねぇー！もうあんたうるさすぎ！綾ちゃんの声でビビったから！」

とうあと綾ちゃんは二人でギャーギャーと騒いでるけど、その場に立ち尽くすあたしはそれどころじゃない。後ろに突然現れてあたし達を見下ろしているやまとくんの姿に「お疲れ様です…」とか逆に冷静過ぎる返事しか出てこなかった。

「なんで俺らに会うのが気まずいの」

流石はやまとくん。あたし達と思わぬ場所で会ったことも、綾ちゃんに叫ばれたことも、今のやまとくんに取っては取るに足らぬことらしい。あたしだけを見つめてそう聞いてきたやまとくんにあたしは戸惑う。

「ドラマでキスされたの見られたから？」

やまとくんの突拍子もない質問に、とうあと綾ちゃんは不思議そうにあたしとやまとくんとを見比べてる。何も言えずにいると、コムドットの車から出てきたぼんさんがこちらに駆け寄って来る姿が見えた。