ブルーライトⅤ (ページ18)

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#218/aya ページ18

side:ナカマチアヤ

車のハンドルを大きく切って、目的地までの道をナビで確認した。隣の席に座るAはさっきからずっと誰かと連絡を取っていて、後部座席のとうあは夜まで仕事だったらしく眠たそうだ。

「深夜のサウナって最高だよね」

「わかんの」

とうあが後ろの席からあくび混じりに言う。そして何かを思い出したように唐突に体を起こし、助手席のAが座る椅子をトントンと笑顔で叩いたとうあ。

「てかAのドラマ観たんだけどやばいね」

「あー、綾も観た」

その言葉にAは顔を上げ、嬉しそうに綾達を見た。

「観てくれたんだ。ありがとう」

「普通に相手役かっこ良すぎでしょ」

「それな！ほんとずるくない？チューとかしちゃってさ」

騒ぎ出す綾達をフッと鼻で笑ったAは大人びた表情をして「おでこにね」と唇を尖らせたあと短い溜め息を吐いた。

「でも何も始まらないよ」

恋には発展しないと彼女は頭を左右に振る。

「なんで？恋人同士の役って恋愛に発展させるチャンスじゃん」

「所詮は仕事相手だしね」

「実際会ったら嫌な奴だったの？」

「全然、まじでめっちゃ良い人」

それなら良いじゃんと、とうあが不思議そうに首を傾げれば、Aは怪訝な顔をしてバックミラーに目をやる。

「LINEすらも聞かれてないし、YouTuberだから動画で話されるって思われてんだよ」

「それは間違いなくあると思う。名前は出さないにしても好きぴ出来たとかって話すしね」

大きく頷けば、Aは諦めた様子で椅子に深くもたれた。

「小学生の時は簡単だったのに、大人になると恋愛ってむずくない？」

「まぁ分からなくもない」

左右を確認しながらハンドルをきる。

「あたし、恋愛してる時の自分がいつもと違う自分になるのが怖いんだよね」

Aは独り言のように言って「とうあ達はさ」と言葉を続けた。

「二人は、大事にしたいはずの人を突き放して困らせたくなる時とかある？」

「綾はあるよ」

それを聞いたとうあはあまり共感出来ないのか曖昧な表情をしている。

「困らせたいというか、どこまで綾のわがままについて来てくれるか試したくなるみたいな感じ」

「えー、やな女」

後ろの座席からあり得ないといった様子でとうあが笑うと、Aも同意するように頭を縦に振り呟いた。

「でもやっちゃうんだよ」

Aはそう言って「早くサウナ入りたい…」と窓の外に目をやる。彼女の横顔は疲れ切ったようで、流れゆく景色をぼうっと眺めていた。