ブルーライトⅤ (ページ15)

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#215/yum ページ15

side:ユウマ

「え…えっ、えぇ！Aちゃんがドラマに出てる！」

深夜、事務所で付けっぱなしだったテレビを見ておかしな声を上げたのはあっちゃんだった。キッチンにいたひゅうがが不思議そうな顔をしてテレビを覗き込み、隣にいた俺もあっちゃんがいるリビングへ視線をやった。

「へー、ほんとだ。マジで出てる」

食い入るように画面を見ていたあっちゃんの側に近寄り俺達もテレビを眺める。内容はよく分からないが、深夜っぽい雰囲気が漂う恋愛ドラマのようだった。
画面の中で演技をするAちゃんはいつもより大人っぽく見えて、相手役の俳優の男の人と向かい合うシーンを見てひゅうがが口角を上げる。

「え？なんかえろくね？」

「思った」

同意するように頷いたあっちゃん。テレビの中の二人はお互いに見つめ合い、じわりじわりと距離を詰めていった。思ってもみない浮かれた展開に俺達はリビングで騒ぎ始める。

「これ絶対キスするやつでしょ」

ひゅうがの言葉に俺も、この展開はそうだろうなぁとは思ったが、なんとなくいけないものを見てるような感覚がして目を細めた。

「うわうわ、やばいやばい！」

楽しそうに笑ったひゅうがの横で、あっちゃんは立ち尽くすようにテレビを見てる。Aちゃんの肩に手を置いた俳優の人が彼女に近寄ったかと思えば、目を閉じたAちゃんのおでこにそっとキスをした。

「ああぁ〜、そっちね」

ガッカリしたらしく溜め息を吐いてうなだれた二人だが、俺は残念なようなホッとしたような、なんともいえない感覚のままテレビから視線を逸らした。だって女友達のキスシーンを見るのは何となく気まずい。

「AにLINEしないとだな」

ひゅうがは独り言らしき言葉を放って、机に置いてあった自分のスマホを取りに向かう。

「恋愛のドラマに出るって、急に遠い人になった感じするよね」

寂しそうに苦笑いしたあっちゃんの呟きに小さく頷けば、リビングの扉が開いてやまとが部屋に入って来た。

「何騒いでんのお前ら」

あくびをしながらそう言ってテレビに一瞥を投げ、今度は二度見して「あ、Aじゃん」と軽く言ってのけた。

「なんだよ。やまと知ってたの？」

スマホを手にしたひゅうがが目を丸くする。

「前にLINEで聞いた」

「A、キスしてたよ」

「まぁ…恋愛のドラマなんだしするでしょ」

気にしてない風に言ったやまとにひゅうがは顔を綻ばせた。

「えー、お前なにそれ。大人ぶんなよ〜」

「そんなんじゃないから」

言いながら、彼は少し疲れたような顔でキッチンに入っていった。