ブルーライトⅤ (ページ14)

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W主演の相手役の若手俳優とは、ドラマの撮影現場で初めて顔を合わせることになった。彼はあたしのことを知っていたらしく「動画見てます」と爽やかに笑う。その笑顔が画面で見るよりももっと整っていて、明日からこの人を推そうと密かに思った。

「ありがとうございます。あたしも映画観ました」

互いに会釈をしつつも、あたしは不安そうにこちらを見ているマネージャーに視線をやる。ドラマが決まったことを一番に喜んでくれた彼だが、ドラマの台本の中にキスシーンや際どいカットがあることを後から知った彼は今朝からずっと渋い顔をしていた。

「やっぱりドラマやめとく…？過激なシーン演じて、一度ついたイメージを払拭するのは本当に大変になりそうだし…」

「人からの印象なんて些細なことでコロコロ変わるんだし、気にしなくていいよ」

これは当日の朝にマネージャーから言われた言葉に対して、それを一掃したあたしの台詞だ。彼はあたしの成功を祈りつつも、お父さんみたいな目線になるのか過保護すぎる時があるからよくない。そうは思いつつも、あたしのことを気にかけてくれることには感謝している。このドラマであたしの成長を感じれば過保護っぽさも抜けるだろう。

「じゃあ時間も限られてるんで、さっそく撮影スタートしますねー」

スタジオに響く監督の声。いつもと違う化粧を施したあたしは数台のライトと、普段YouTubeでの撮影で使うカメラとは違い格別に大きなカメラの前に立つ。眩いほどの光の奥でマネージャーと、事務所の社長が何やら話しているのが見えた。

＊＊

「Aちゃんってコムドットのメンバーと付き合ってるの？」

撮影合間の休憩時間に、そう尋ねてきたのは年齢の近いメイクさんだ。YouTubeをよく観るらしく、あたしとコムドットとのコラボ動画も全部観たとメイク直し中に言われた。

「付き合ってないですよ」

「そうなんだ。よくネットニュースでもAちゃんとやまとくんの記事とか見るから気になって」

「そんなのあるんですねー」

なんて答えながらも、そういう記事や質問はもう見飽きた聞き飽きたとあたしは心の中で思う。ゆうたくんとのことも曖昧なままだが、とにかく今はドラマに集中し成果を出して、このチャンスをものにしたい。

「じゃあメンバーと付き合うなら誰が良いとかある？」

「えー、みんな良い人だから難しいです」

「動画見てる限りでは、ゆうたくんとすごいお似合いだけどね」

笑いながら言った彼女の言葉を右から左に受け流すあたしは台本に目を落とし、どうともとれない相打ちをただ返した。