人生で最も最悪な日 ページ39
××
「何が最悪なのです？ミス・アドラー」
「更に最悪」
カツカツとハイヒールを鳴らし、大量の部下たちを引き連れてやって来たのはミス・ピッカリー議長だった。グレースは瞳だけ動かし、ピッカリーを視認するなり大きな溜め息を吐く。
「あなたは初めて会ったときから何も変わっていませんね」
「その言葉、そっくりそのままお返しするわ……」
ピッカリーとグレースが会ったのはおよそ二年前。魔法議会に用件のあったグレースが赴いた際のことだ。お互いを一目見た瞬間、ふたりは同じことを思った。合わない、と。それは同族嫌悪にも似た感情。
「……それで？私と昔話でもしたくて来たの？」
「いいえ。オブスキュラスを産む者を殺すためです」
「……ふぅん。返り討ちにされないと良いわね」
その言葉に、ピッカリーの後ろに控えていた闇祓いたちが睨みを利かせてくるので「あらごめんなさい。お気に障ってしまったかしら」と淡々と述べた。
「どこにいるか、アドラー。答えなさい」
「知らない。私に殺しの片棒を担がせようとしないで」
「ミス・アドラー。あなた、自分の立場をお分かりですか？」
「血まみれ傷だらけの怪我人にかける言葉にしては、あんまりすぎないかしら？」
ピッカリーは小さく溜め息を吐くと、大勢の闇祓いと共に姿を消した。どうせ彼らはグレイブスのことにちっとも気がついていないのだろう。Aはゆっくりと目を閉じた。
「……オブスキュラスを産む者を殺す、ね……」
ニュートはきっとそれをゆるさないだろうし、グレースも良い気分はしなかった。自分も随分、ニュートの色に染まっているらしい。
「……全く……ほんとに最悪だわ」
彼女は小さく溜め息を吐いてから、ピッカリーたちの後を追うように、姿くらましで姿を消した。
▽
その黒い塊の残骸を見たとき、彼がどうなってしまったのかを理解して、ニュートは愕然とその場に立ち尽くした。オブスキュラスに苛烈な呪文を打ち込んだ闇祓いの背後から、ピッカリー議長が現れた。その少し後から今度はグレースが姿をあらわす。彼女の目はグレイブスを捉えていた。
「……愚か者たちめ。何をしたか分かっているのか？」
「グレイブス長官、オブスキュラスを生む者は殺せと、私が命じました」
「ええ、議長。あなたの今夜の行いは歴史に残るだろうな」
グレイブスはピッカリー議長に近づいて行く。
それは凄まじい殺気だった。
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ゆずこたつ(プロフ) - いや、もうなんていい作品…泣きすぎて目が腫れました…これからも頑張ってください‼︎ (2022年4月18日 15時) (
レス) @page46 id: f9853265aa (このIDを非表示/違反報告)
柊あんず(プロフ) - リーフィーシードラゴンさん» コメントありがとうございます！わ〜〜嬉しいです…！長い間更新停止していて申し訳ない…想い人のためならなんだってするのがグレースなのでね…！体調のお気遣いまで…有難いです…！更新頑張りますね！！ (2020年11月9日 0時) (レス) id: 30d83766f8 (このIDを非表示/違反報告)
リーフィーシードラゴン(プロフ) - はじめまして！久しぶりに開いたら更新されていて読ませて頂きました！グレースがいい子すぎて泣けるしどうか幸せになって欲しい、ぐぬぬ……。体調に気をつけながらも今後の更新頑張って下さい！ (2020年11月8日 13時) (レス) id: 8a9bd162c1 (このIDを非表示/違反報告)
柊あんず(プロフ) - 浅葱さん» コメントありがとうございます！！ニュートとの進展…第二部ではニュート側の感情なども書いていきますのでぜひお楽しみに…！今月か来月かには第二部にいけると思いますので引き続きよろしくお願いいたします！！ (2020年10月7日 2時) (レス) id: 30d83766f8 (このIDを非表示/違反報告)
浅葱(プロフ) - あっという間に読み進めていきました！とても面白いです、ニュートと主人公の関係は進展するのかとハラハラしてます。更新頑張って下さい！応援してます！ (2020年10月4日 21時) (レス) id: 72c04e1480 (このIDを非表示/違反報告)
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