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33.Doll ページ33

Side:Rain

「随分と遅い登場だな、アシェル・エイムズ。」
「すみませんお父様。手こずりました。」
「まぁいい。」

正しく、絶望。

無邪気な淵源(イノセント・ゼロ)との最終決戦とも言えるこの場で、新たに現れた刺客は"アシェル"と呼ばれた。

「にい、さま?」

金の前髪は黒く染っており、美しい金の瞳も紅く染まっていた。それが、まるで俺たち兄弟の関係が切れたと言わんばかりで、腹立たしかった。

アレは、俺たちの知っているアシェルではない。

無邪気な淵源(イノセント・ゼロ)が愛おしそうにアシェルの顔に触れる。

辞めろ。

その汚い手で俺の大切な弟に触れるな。

そう叫んでやりたかったが、思うように声が発せられなかった。

「アシェル、始末しておけ。」
「かしこまりました。」

アシェルが無邪気な淵源(イノセント・ゼロ)から離れ、余裕の笑みを浮かべてこちらへとゆっくり歩き出す。

違う、あれはアシェルではない。

分かっていても、見た目そのものはアシェルとほぼ同じで、頭がクラクラしそうだった。

「アシェル先輩ッ!」
「アシェルは眠ったよ。砂の神覚者を助けようとしてたみたいだが、無駄だったな。」
「目を覚ましてよ兄さまッ!!」
「無駄だよ。お前の兄さまは死んだんだ。」

アシェルがフィンの前に立つ。

いいことを思いついたと言わんばかりの笑みを浮かべたのを見て、マズイ、そう思うが俺も満身創痍。それに加えてマッシュに魔力を流したことで体が思うように動かず、助けに行けない。

逃げろ、フィン。

誰か、なんて、珍しく他力本願をしてしまうくらいには、俺も絶望に瀕していた。

「フィン、こっちにおいで。」
「アシェル、に、さま」
「グラビオルッ!惑わされるなッ!」
「ランスくん!」

虫唾が走る。

アシェルの顔で、

アシェルの声で、

アシェルの体で、

無体を働くな。

動かなければ。そう思っていると、同じく満身創痍のライオさんが俺の肩を支え、立ち上がってくれる。

「いくぞ、レイン。」
「ありがとうございます。えぇ、行きましょう。」

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ほり。(プロフ) - 作者様天才すぎませんか?!とっても面白いしストーリーは涙なしではとても見られません!!これからも頑張ってください!応援してます!! (3月31日 22時) (レス) @page37 id: a556898cd7 (このIDを非表示/違反報告)
ありさん(プロフ) - めっちゃ面白い!!!ほんとにあなた様天才ですよこんな面白い物語書けるなんて!!!いつも楽しみにしてます!!!頑張ってください!!!!! (3月30日 6時) (レス) @page23 id: d57e220c95 (このIDを非表示/違反報告)
ソラサン(プロフ) - スッゴい面白いんで頑張ってください!!!!こういうドロドロ系?大好きなんで! (3月28日 23時) (レス) @page22 id: 8b4b86c7c1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:小坂谷 真夜 | 作成日時:2024年3月18日 22時

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