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少し酒も回った時に、
俺はふと、皐に目をやる。
｢……？｣
先程まで座っていた皐が居ない。
周りを見渡すと、仁王と目が合う。
仁王は、俺からゆっくりと視線を外すと、
自分の右肩に向く。
其処には酔いが回ったのか、
すやすやと、寝ている皐がいて。
仁王は口角を上げ、不敵に微笑む。
その笑が何を言いたいのかぐらい、すぐに分かった。
｢精市？｣
柳の声が聞こえた気がしたけど、
俺はそんなことどうでも良かった。
寝ている皐の腕を引いて、
お店から出ていって、近くの公園のベンチに座り込んだ。
睡眠を邪魔された皐は、
物凄く不機嫌そうな顔で、俺を睨み、
大きなアクビを一つ。
｢なに、精市、｣
｢仁王の肩でなんで寝てたの？｣
｢何でって、仁王が貸してくれたから。｣
｢そういう事じゃないよ。｣
不機嫌そうな声が出た。
すると彼女はー眉間に皺を寄せて、
更に不機嫌になる。
｢じゃあどういう事だよ。
精市の言いたいこと、まじ分かんない。｣
｢仁王が、下心ない、て思ってる？｣
｢なに、急に…｣
仁王は一途だ。
未だ思いを消せずに、淡い恋心を抱いているのは、
見ていればわかること、
彼女はまだ、
何もわかっていない。
｢…言いたいこと、
それだけならお店に戻るぞ。｣
｢俺はまだ、終わってないけど。｣
｢なに、早く言ってよ。｣
このまま終わるせるなんて、
俺はそんなバカな事はしないさ。
君はどうせ、
また仁王のところへ行く。
まるで俺が片思いで、
失恋したみたいじゃないか…
｢幸村の嫉妬なんか、私の知らない。｣
｢は？｣
思わず間抜けな声が出る。
彼女は今｢嫉妬｣と、言ったのだ。
｢学生時代から思ってたけど、
私、別に他の男の人に興味なんてないけど？｣
｢そ、｣
｢だー！！理解しろバカ！！｣
顔を真っ赤にさせる彼女は、
手で顔を隠しながら、
言葉を続ける。
｢別に疚しい気持ちなんて持ってないし、
一途だって言ってんだよ！！｣
｢へえ…そんなに俺のこと、好きなんだ？｣
嬉しい誤算、かもしれない。
滅多に聞けない、彼女の俺に対する気持ち。
自然と頬が緩んでいくような。
俺は、その場から逃げようとする彼女を引き寄せ、
自分の足の間に無理やり座らせた。
＿＿そうして、冒頭に至る。
｢幸村、お店、｣
｢ダメだよ。
皐があんな嬉しい事、言うからだろう？」
｢忘れろおおお！！！！｣
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