終章 ページ42
結婚式が終わり、
ラストのブーケ投げ。
俺と彼女は、外へ出て
ブーケを投げる準備。
｢いつ、投げればいいの？｣
｢好きな時に投げればいいよ。｣
｢うーん、じゃあ、精市が合図だして！｣
ニコニコと笑う彼女につられて、
俺は笑顔で、頷いた。
｢じゃあ、｣と、言おうとした時に、
あの子、と目が合った。
俺の、ルームメイトの女の子。
(なんで、見つけられたんだろう…)
大人数の客の中で、
特に目立つわけでも無いのに。
俺は直ぐに、彼女を見つけてしまった。
彼女は、特に笑顔という、訳ではないが
祝福してくれている様で。
少し微笑んでいる様な、
悲しんでいるような。
｢精市…？｣
俺がなかなか合図を出さないため、
不安になった彼女が小声で尋ねてきた。
彼女の声で我に帰った俺は、
合図を出す。
すると、空に舞う、一つのブーケ。
皆の視線は、ブーケへと向く。
だけど俺は、、
｢え……？｣
彼女に視線を向けた時、ゆっくりと唇が動いた。
見間違いかと思った。俺の勘違いだと。
けれど、彼女の唇は確かに、こう告げていた。
『さようなら、幸村精市』
-
バイバイ、
また会うときは何時なんだろうね？
そんな意味を込めて、
幸村に、最後の挨拶を述べた。
｢バイバイ、幸村精市。｣
目が合ってる、でも声は届かない。
幸村の顔色が変わる。
私が何を言ったのか、理解出来たのだろうか。
理解出来たとて、疑問しか残らないだろうけど。
｢さようなら。｣
もう二度と会うことはない。
彼の隣に立つ新婦が投げた白いブーケは、放物線を描きながら、ゆっくりと落ちてくる。
見知らぬ人の手に弾かれ、そして、私の腕の中へと落ちてきた。
嗚呼、おかしいな。
投げた私が、今度は貰う番だなんて。
｢あらら。｣
ブーケを貰った人は、
次に結婚する人、なんだっけ…？
そんなジンクス、きっと嘘だ。
だって、私のは叶わないもの。
(さようなら、“幸村皐”)
新郎と新婦を祝福する声と拍手が段々と大きくなる中、顔を俯けた皐の頬を一筋の涙が伝った。
暗転。
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