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｢先輩ー！｣
｢ゲッ…駿河…｣
赤茶色の髪をなびかせて、走ってくるのは、
無駄に頭が良い変態女、駿河胡桃。
毎回彼女に会うたび、疲労感が増すため、
皐は会いたくない、と思っていたのだ。
だが、この狭い世の中、会わないわけがない。
｢先輩、私、幸村くんのこと聞いたんですけど｣
｢今更幸村はどうでもいいから。｣
ふっ、と鼻で笑い飛ばすと、
駿河はきょとん、とした顔で首を傾げる。
｢先輩、結婚する話、知ってたんですか？｣
｢＿＿え？｣
｢あれ、おかしいなあ…｣
｢いやいや、おかしいのはお前の方だから。｣
幸村ならばきっと、メディア関連を避けるため、
あまり公にそんな事言わないはず。
柳辺りになら話していかもしれないが、
よりにもよって駿河だ。
きっと柳は、煩い駿河に話はしないはず。
それなら、
｢幸村くんが、私に教えてくれたんですよ。｣
｢は？それって、｣
｢恋人さんというか、婚約者さんと
たまたま一緒にいる時に私会ったんですよ！｣
興奮気味に話す彼女は、
本当になにも事情を知らなくて。
幸村が倒れたこと以外、
何も知らされていなかったのだ。
｢幸村くん、先輩のこと｣
｢私のことなんて完璧に忘れてるよ。
まあべつに、それでも良いと思ってるから。｣
｢良くないですよ、馬鹿な事言わないでください！！｣
突然、駿河が私の両肩を掴んだ。
身長差があるせいで、上から鋭い視線が私に突き刺さる。
目にうっすらと涙を浮かべて、
口をへの字に曲げて、掴む腕は微かに震えている。
｢私、だって、｣
｢うん、｣
｢先輩と幸村くん、ずっと一緒なのかと…思ってて｣
｢そんなの無理だ。｣
ぼろぼろと、涙が零れ出す。
溢れ出す感情は、止まらない。
間近で泣き顔を見ているせいか、
こっちまで、鼻の奥がツンとしてきて、目尻が熱い。
｢＿＿幸村くんに弄られて
ゴリラ化する先輩が見れないと思うと｣
｢は？ちょっと待て。｣
｢先輩って基本的に犬みたいじゃないですか。
キャンキャン吠えてるっていうか、｣
｢ちょっと黙ろうか駿河？！｣
｢結構ムッツリな幸村くんに、
あやれこれやされて、キャンキャン吠える先輩が好きなのに………先輩のバカ！！｣
｢お前の顔面に穴開けていいか？｣
何処までも失礼な駿河に、
ため息と同時に怒りがこみ上げてくる。
彼女に1mmでも期待した自分が愚かだ。
｢はあ、幸村くんと先輩のイチャイチャが…｣
｢黙れ。｣
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