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『湘南だ！！』
『あんまりはしゃいでると、
波にのまれるからね。』
『チッチッチッ！
分かってないねえ、精市くん。
この位の歳の女は』
『この位、て例えて良い年齢だっけ？』
『うるせえ！！一度言ってみたかったんだよ！！』
麦藁帽子をぎゅっと深く被り、
コチラに向かってくる波と影踏みをする様に
はしゃぐ彼女は、悪戯っ子の様な笑みを浮かべた。
次の瞬間、冷たいものが顔面に飛んできて。
飛んできたものを手で拭いながら彼女を見ると、、
『あ…』
『ギャー！！！！』
次の瞬間、見事に波にのまれていた。
.
一番新しい記憶。
海の砂浜を、彼女と笑い手を繋ぎながら、
夕暮れ時を歩いていて。
不意に、｢大好きだよ。｣なんて甘い言葉を
冗談で言うと、彼女は、笑ったんだ…
｢精市？｣
名前を呼ばれて、ハッと目が覚める。
視界に飛び込んで来たのは、俺の恋人で、
見慣れない部屋。
そうだ、ここは
彼女と今、住んでいる家だ。
｢精市、幸せそうな顔をしていたわね。｣
｢え？｣
｢私が起こす前の話よ！
精市ったら、嬉しそうな顔して寝てるんだもの。｣
「なんの夢見てたの？」と、問われて。
俺は正直にこの夢の話をするのに戸惑いを感じていた。
だって、目の前にいる彼女と違う人と一緒にいた
夢を見て、嬉しそうな顔をしていたなんて、
言えるはずがない。
(嘘はつきたくない……でも、)
『でも、話して何かにが変わるものでもないか。』
｢俺が見ていた夢はね、＿＿＿｣
顔はハッキリとしていない。
だけど、一つだけ分かることがある。
俺を捉えていたのは、
夏の青空の様な透き通った“青色”だということ。
(君は一体、誰なんだ……？)
『愛してる、て今は言えなくてもいいさ。』
"いつか君の口から、言わせるけどね？"
嘗て愛した者の声すら、
思い出せない、哀れな男＿
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