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｢お粥は？｣
｢卵粥…｣
｢バナナ入れる？｣
｢皐のご飯のおすそ分けなんていいよ…」
｢バナナ栄養価高いんだからな！
舐めるんじゃねえぞ！！｣
熱に魘されてても、
幸村は人の事をバカにする力は
どうやら残ってる様子です。
季節の変わり目、
じとじとと、湿気の多い6月半ば
寝冷えしたのか、何なのか…
ゲボげほと、真っ赤な顔の幸村が、
ベットに寝ている。
テニスプレイヤーなんだから、
と、あれほど体には気をつけていたのに、
風邪をひくだなんて。
｢締りがないなー、お前。｣
｢いいから早くご飯作ってきてよ…
不味かったら承知しないよ？｣
｢…どうせ不味いって言うくせに…｣
はあ、とため息をついて
台所へと足を進める。
幸村は｢不味い｣なんていつも言いながら
料理を完食させている。
二言、三言、
幸村は多いのだ。
｢ほら、幸村食え！｣
そうお粥を差し出すと、
｢毒とか入ってそう…｣
｢手が滑って一味がたくさん…｣
じろり、と幸村に睨まれて、
鳴らない口笛を吹きながら、視線を逸らす。
一味が大量に入ってしまったのは、
単なる事故であり、嫌がらせではない。
どちらかというと、
その辛さを何とかするために施した処置が……
｢うっ……なにこれ、甘いんだけど…？｣
｢蜂蜜だよ、体にいいんだぞ？
ほら、幸村、お前熱測って。」
体温計を目の前に差し出すと、
幸村はそれをじっと見つめたまま、受け取ろうとしない。
ほら、と催促すると、
上目遣いで、こちらを見てきた。
｢おい…｣
すると、突然右の人差し指を、
パクリ、と幸村が噛んだのだ。
皐は真っ赤になったまま、
己の指を噛む幸村を、見て、口をぱくぱくさせる。
幾ら、幸村くんだとはいえ、
ここまでやるだなんて、想像もつかない。
ただでさえ、外では冷静でクールな人間なのに、
人の指を、噛む、なんて。
｢ふふ、なに？
可愛い声、出して。｣
｢指を噛むなあああ！！｣
｢熱を測れって言ったのは皐だろう？｣
｢体温計を受け取れよ！！！｣
｢あ、ごめん、
体温計と皐の指が同じに見えて。｣
｢うちの体温計は脇に挟むやつだから！！！｣
何処までも人の上の思考を行く。
幸村は完全に計算済み。
｢私、絶対に風邪とかひきたくない…｣
｢そもそも、ゴリラって風邪ひくのかい？
それに、バカは風邪ひかないんだろう？｣
｢うるさい。｣
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