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｢ねえ、皐｣
5月の温かな日差しに、
うとうと、としながら、
幸村の声に、耳を傾ける。
うっすらと目を開けると、
優しげな眼差しをこちらに向ける幸村が、
頬を撫でる。
｢え…仕事ないよね……？｣
｢うん、無いよ。
だから、何処かへ出かけようと思ってね。｣
｢何処？｣と、思考の回らない頭で、幸村に問うと、
彼自身、深く考えていなかった様で、
｢そうだね…｣と、
口元に手を当てて考える素振りを見せた。
｢てか、日曜日だから寝かせてよ…｣
｢えー。｣
｢私は日曜日はお休みタイムなの…｣
｢おやすみ｣と、布団を上までかぶり、
再び襲って来る睡魔に、私は目を閉じた。
だが、彼は諦められないようで、
｢ねえ」と、まるで構って欲しい子供のように、
寝ている私の体をゆすってくる。
｢あーもー！今は眠いの！｣
｢折角だから出かけないか？
暇だから寝たいんだろう？｣
｢そうだよ、もう寝かせてよ！｣
幸村の手から布団を奪い返し、
今度こそ寝よう、と固く目を瞑る。
すると幸村は、
諦めたのか、何も言わなくなった。
ああ、本当に眠れる、と
意識が飛びそうになった時、
背中に温もりを感じて、一気に目が覚めた。
｢ちょ、幸村…｣
起き上がろうとしたのだが、
それはかなわずに、首だけ後ろへと向いた。
背中に感じるぬくもりの原因は幸村で、
長い睫毛を伏せて、
小さく寝息を立てているではいか。
なんで、お前まで寝てるんだよ！
私が眠れないだろ？！
抱きつかれた状態では寝れない、と
抱きつく幸村の腕を解こうとしたが、
なかなか離れない。
男女の力の差は歴然だから、
仕方が無いことだ。
｢ゆき、｣
｢精市｣
｢は？｣
ゆっくりと、幸村は目を開けた。
その目はいつもの鋭い目ではなく、
熱を帯びた、眼差しで、目を逸らしそうになった。
｢…なに？｣
｢名前呼んでくれたら、
腕を離してもいいかな、て。｣
ふふ、と微笑むが、
その目は本気だ。
何処でそんな本気モードを使っているんだ、と
言いたくなったが、
そんなこと言えるほど、自分には余裕がなくて…
｢精市、寝たいから腕を離し｣
｢そんな真っ赤な顔されて、
名前呼ばれると、俺が照れるなあ……｣
｢うざい！｣
その後、布団から蹴り倒された。
｢おふとぅんは私のものだぞ。｣
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