君ナシデ愛ヲ知レナイ 2

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「誰もがさ、綺麗な心だけで
誰かを愛してるわけじゃないよ」



俺だってあの時はただかっこつけただけで
本当はあの後、ずっとAを抱けば良かったと後悔していた。


好きだと思えば思うほど
自分の欲や渇望も膨らんでいって

そんな気持ちを抑えるには
自分にも相手にも嘘をつくしかなくて

相手の幸せだけを望む無償の愛でいいと
必死に自分に言い聞かせるしかなかった。


けれど誰もがそんなに強くはないから

心の空洞を埋めたくて
誰かと身体を重ねて
誰かの優しさに縋って。


俺も
Aも。



こんな気持ちのままじゃ、結婚することも
Aを諦めることもできない。



「もう、間違うなよ。
一人で考えて出した結論て
ほとんどろくなもんじゃないんだよ、A」



本当の意味でお前を救ってあげることができたなら
高校だった時の俺の気持ちも
今の気持ちも
報われるような気がして

そうしたら本当の意味でお前を
無償の愛を包んでやれる気がして



「2度も間違った選択で自分のことを
傷つけるのは、絶対に許さないから」



少し強い語気で伝えれば
初めて声を上げて泣き出すAを見て驚いた。



お前の悲しみも苦しみも全部
取り払えるのが俺であったら
どんなに幸せだっただろう。


だけどそれは決して俺じゃないから。



「テヒョンイと共に生きていきたい？」



お前がそれを望むのなら
俺の持つ全ての力を使ってでも
叶えてあげる。



他人の戸籍が欲しいなら手に入れてやるし
誰も知らない場所へ逃げる手伝いだってしてあげる。



「何をして欲しい？」



けれどいつまでも答えてくれないA。



「テヒョンイに訊けばいい？」



すると、Aが慌てたように
首を横に振る。



「嫌なの？」

「.....私は、」

「うん」

「私、ね、」

「うん」

「.....」



何度も言いかけては
困ったように口を噤むA。


Aはきっと今まで
誰にも自分の本音を話したことがないのかもしれない。


初めて見る幼子のような
頼りない姿を見せるAが
とてつもなく愛おしかったけれど


いつからAは自分を偽って生きていくと
決めたんだろう。

いつから自分を殺して
誰にも心の内を見せずに
生きてきたんだろう。


そう思うと、泣きたくなるほど
胸が苦しかった。

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