君ナシデ愛ヲ知レナイ 2

Taehyung ページ13

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新しく住む場所は決まった。


荷造りを終え
引越しのトラックが来るまで
ベランダで煙草を吸って待つ。


人間は欲に塗れた生き物だ。


自分以外の男を見ないで。
愛したい。
愛されたい。

俺だけを愛して欲しい────


けれどその資格すら持っていない自分は？


だから狂気を隠して
ただの姉弟として
傍にいることを選んだのに。


徐々に膨れ上がる欲。


自分が人間から怪物に変わっていく。


取られたくない。
俺だけのものでいて欲しい。


いっそ共に死のうか。


そんな想いに心が支配される前に
離れることを決めた。


俺が人間である内に離れれば
Aは何も知らずに幸せになれるはずだから。



休日だからまだ寝ているのか
Aの部屋のドアは閉ざされたままで

最後に顔を見て
別れの挨拶すら言うことはできなかった。



新しい部屋に着くと
間もなくエアコン取り付け業者がやってきた。



『こんちはー。
エアコンを取り付けに来ましたー』

『お願いし───っ』



その顔を見た瞬間
手にしていたダンボールを床に落とす。



『ジホ』

『テヒョ、ン？』



すぐに分かった。


忘れるはずがない。


殺したいくらい憎み
頭の中で何度も殺した男の顔を。


抑え込んでいた殺意が蘇る。


許せるわけがない。


何よりも大切なものを
ぐちゃぐちゃに汚した男を。


Aを守らなければと
逃げるようにあの家を出たけれど
本当はずっとこの男の息の根を止めてやりたかった。



『久しぶりだな、テヒョン。
姉弟仲良く暮らしているのかと思ったけど
一人暮らしをするのか？』

『お前に関係ない。
殺したくなるから喋るな』



俺の言葉に
怪訝そうな顔をするジホ。



『何だよ、物騒だな。
お前、なんか誤解してない？』

『誤解？叔母さんが亡くなって
引け目を感じていた姉さんを
養育費のことで脅して
無理やり好きにしたことが誤解？』

『は？』



ジホが怒りを孕んだ目で俺を見る。



『お前、俺のことずっとそう思ってたのか？』

『しらばっくれんな。
殺されなかっただけでも有難いと思え。
次に俺たちの前に現れたら殺す』

『おいおい、偉そうに上から物言ってんじゃねーよ。
親に捨てられたガキのくせに』



俺にコケにされたと感じたのだろう。
ジホの口調がガラリと変わった。



『何を勘違いしてんのか知らねーけど
あの女は自分から服脱いで俺に股開いたんだぜ』



瞬間
カッと頭に血が上って
ジホの胸ぐらを掴んだ。

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