いざ敵地へ JK ページ8
Jungkook side
いつも予定がない休日は
昼まで布団の中にいるから
早朝デートはとても新鮮で楽しかった。
「すっごい楽しい」
感動して思わず口にすれば
彼女も笑って
「私も。休日の午前中なんて絶対寝てるもの。朝の散歩っていいね」
俺の手をぎゅっと握りしめてくる。
「あーあ。結婚式に出世するより
こうやってずっとグクとお散歩していたい」
俺のことをグクと珍しい呼び方で呼ぶ彼女。
でもそれも２人だけの特別みたいで
悪くなかった。
「いいよ。ばっくれちゃう？
ずっとデートしよっか？」
俺としては彼女が楽しいのなら
どっちでもよかったから。
「ありがと。
でも最後のケジメだから頑張る」
彼女の泣きそうな笑顔に
はっと気がつく。
出会った時から笑顔を絶やさず
ずっと明るく振る舞っていた彼女の心の中を。
今まで気づかなくてごめん。
平気そうだなんて思ってごめん。
何も分かってなかった自分が恥ずかしくなる。
哀しい時程、笑う人だっているのに。
寂しい時程、強がる人だっているのに。
孤独の中でも
美しい笑顔を咲かせる人だって─────
「大丈夫。俺は絶対にヌナの手を離さないよ。傍にいるから。
だから心配しないで」
突然、俺に抱きしめられ驚く彼女。
「大丈夫だからね...ヌナ」
囁きながら、優しくその背中を撫でれば
彼女が俺の背中にそっと腕を回し、呟いた。
「ありがとう。頼りにしてるね」
俺の胸に顔を埋めて。
＊
「うわ、すごいね」
都心の中にありながら
360度自然に囲まれたガーデンチャペルを前に
思わず感嘆の声を上げてしまう。
解放感溢れた青空と緑の中に建つ
白亜の美しいチャペル。
ここでこれから彼女の友達の結婚式が行われる。
「都心にもこんな避暑地みたいなチャペルがあるんだ。滝まである」
「ほんとだね」
彼女も辺りを見回しながら感動している。
俺の手をぎゅっと握りしめたままの彼女から
緊張と震えが伝わってくる。
だから、敢えて明るく会話を続ける。
「俺は海が見える教会で
結婚式がしたいな」
「素敵だね」
「で、一緒に浜辺を走るの」
「結局筋トレがしたいんでしょ」
「あは、違うって」
まるで本当の恋人同士みたいに
出逢った時から自然に会話が弾む俺達は
仕事上じゃなくても
本当に気が合うのかもしれないと思った。
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作者名：amane
| 作成日時：2020年11月23日 13時
