彼女との別れから７年後 JK ページ36
Jungkook side
遅すぎる初恋は拗らせるとはよく言ったものだと思う。
初恋は、捨て猫みたいに毎日街をふらふらしていた高校生の自分を拾ってくれた
凛とした高嶺のとても美しい人だった。
子どもの自分はすぐに夢中になった。
彼女の心が他の男のものだと知っても
傍にいたいと思う程。
傍にいられるだけで幸せだと思うくらい
その時の自分は彼女しか見えなかった。
彼女は自分が生きる世界の全てだった。
けれどしてもらうばかりで
守って貰うばかりで
甘やかされるばかりで
彼女の為に何もしてあげられなかった。
だから早く大人になりたかった。
早く大人になって
彼女を全てのことから守れる男になって
彼女に相応しい男になりたいと。
けれど俺が大人になる前に
俺の前からいなくなってしまった彼女。
彼女を失うと
キラキラと輝いていた世界は
再び色褪せ、精彩を欠き、枯渇した。
それからの自分は
彼女を失った喪失感と痛みから逃げるように
アルバイトに没頭するしかなかった。
様々な女性と出逢い関わって
少しずつ大人になっていった自分。
彼女が俺をこの世界に連れてきてくれなかったら
俺はいまでもどうしようもない人間のままだっただろう。
テヒョンも俺も彼女に拾われ
愛の欠片を貰ったことで
初めて誰かを愛することを知った。
本当の愛を、知った────。
＊
いつも彼女の面影を
誰かの中に探しながら生きていた。
忘れることなんて出来なかった。
単なる想い出にしてしまうには
まだ時間が足りなかった。
今付き合っている人も
正直に言えば
何処となく雰囲気が彼女に似ていたから
好きになった。
最低だと理解っていても
何処かに彼女の面影を感じなければ
誰のことも好きになれなかった。
別れてから何年も経っているのに
未だに心も身体も
彼女に囚われたままの自分。
そんなある日。
「Aヌナに会った」
「え？」
「仕事中だったから声かけられなかったけど
絶対ヌナだった」
テヒョンは大学在学中に
幾つもの芸能事務所からスカウトされて
その中でも何故か小さな事務所に入り
大学卒業後は主にモデルの仕事を中心に
生計を立てていた。
ファッション雑誌の仕事で訪れた公園で
偶然Aを見かけたと
興奮を隠せない様子のテヒョンに
心臓が止まりかけた。
彼女のことを忘れられずにいるのは
テヒョンも同じで
テヒョンの顔は涙ぐんでいるようにも見えた。
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作者名：amane
| 作成日時：2020年11月23日 13時
