House of cards 2 (ページ14)

今日:5 hit、昨日:0 hit、合計:39,315 hit

思い出す JK ページ14

Jungkook side

「狭くてごめんね」

大きな駅を降りて１０分ぐらい歩いた閑静な住宅街の中にある
小さいながらも新しそうな綺麗なアパートメント。

物の少ないシンプルな部屋は
ふと、あの人を思い出させた。

都会の片隅で
仔猫と一緒に自分を拾ってくれたあの人を。

「なにもない部屋でしょ？」

申し訳なさそうに呟く彼女に

「いい女は物が少ないんだよ」

懐かしむように言えば

「適当なこと言って」

優しく睨まれて
慌てて首を横に振る。

「本当だよ」

「はいはい」

けれど少し寂しすぎる気もして
今度キコの家に来る時は
この部屋に合いそうな南国の観葉植物をプレゼントしようと思った。

てか、また来ようとしてる？俺。

「グク？どうしたの？」

「あ、いや、今度この部屋に合う観葉植物をプレゼントしたいなって思って」

急に顔を覗き込まれて
心の中が透けて見えたのかと思い焦る俺に

「ほんとに？期待してる」

そう言って心底嬉しそうに笑う彼女に
期待してるのはむしろ俺の方で。

キコはやっぱりどこかあの人に似ている。

俺の言い様のない焦りや苛立ち、そして虚無感を消して
代わりに心の中を温かいもので満たしてくれたあの人に。

「ねぇヌナ、ここ座って」

自分の脚の間に彼女を座らせ
後ろから抱きしめる。

「大したことなかった、元彼。悪いけど」

俺の言葉に吹き出す彼女。

「やっぱり？」

「うん。あと花嫁よりヌナのが断然イイ女だった。
だから、もうこの先ヌナが傷つくことなんてないよ」

すると、彼女がゆっくりと俺の方を振り返る。

「優しいね、グクは。
でも、これ以上は優しくしないで。
この夢が覚めるのが怖くなっちゃうから」

彼女の寂しそうな瞳と声に
ふと、あの人にも同じようなことを言われたことを思い出す。

「俺は誰にでも優しいわけじゃないよ」

自分はただ
好きな女には、優しくして、甘やかして
自分なしじゃいられない程
ぐずぐずに溶かしたいだけだ。

「ねぇヌナ」

「ん？」

「抱いていい？」

柄にもなく緊張して
掠れる声。

「決定権は私？」

「俺でいいの？」

けれど黙ったままいつまでも返事をくれない彼女に

「無言は肯定だよ、ヌナ」

その小さな唇にそっとキスをした。