チョコレートケーキ（短編）

出会えた人としか、恋はできない。 1(Kento) ページ16

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街を歩く。






雑踏にまぎれて、俺は探した。









そして、Aを見つけた。


やっと、見つけた。



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俺の目に、周りは全てスローモーションに映って。




人の喋り声も車の音もテレビの音も、セミの鳴き声も。


全部が混じりあった、ただのざわざわに変わって。









数秒間。





Aを中心に世界が動いているように見えた。



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あぁ、やっぱりヒロインはAだって思った。








もちろん、主役は俺だよ？









Aも俺を探しているからか、不安そうにあちこちきょろきょろ見てる。









あ、違う違う！



俺こっち！こっちだから！





そっちは反対だから！



って、俺はひやひやしながらAを見る。







Aを見失わないようにと、俺は人を避けながらケータイを手にとる。





人で溢れかえっていて、ほんと動きづらい。









さっきぶつかっちゃった女の子に、キャーって言われたから、焦った。



「ごめんね」って言って、俺はその場を急いで去って。









Aと、はぐれた。






今はすぐに情報が回るから、マジでこわい。



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もう、今日はこのまま大人しく家に帰って二人でのんびりしよ？って。



いつもならなるんだけど。









今日は違う。






特別な日で。









なんたって、今日はAの誕生日。









前々から計画してた、最高のデートプランが俺にはあって。



けど、それはまだどれも実行出来ていない。





バラの花束だって、まだ渡せてないし。








まだ俺は車の免許とってないから。


こういう時に車があったら便利だよなって思う。








そしたら俺は。

Aを見失わずに。



ずっと俺の隣に置いておけるのにね。








今はこんなに、遠いだなんて。







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何か起こる日っていうのはさ、なぜかそういうことが色々重なるもので。








Aは今日、ケータイを忘れてきたと言っていた事を俺は思い出した。







A「家に取りに帰ろうか迷ったんだけど……。
早く健人くんに会いたかったし、健人くんとなら一日くらい何とかなるだろうなって思ったの。
こんな日にごめんね……」





なんて、ちょっと泣きそうなうるうるの。

上目遣いで言われたらさ。



俺は何でも「いいよ？」って、言うに決まってるじゃん。




もしかして、わかっててわざとやってるの？





て。

うそうそ、冗談だよ(笑)



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