チョコレートケーキ（短編）

ここにいる 1（Kento） ページ12

.



.





私はいつも言いなりで、流されて、生きてきた。





最後に自分で選んだのって、なんだっただろう。






人生は選択肢ばかりだ、と人は言うけれど。









私は。



朝、起きるか起きないかですらきっと、人任せで。




起きないと、怒られるから起きる。






そこに自分の意思なんてない。







それなら私は、どこにいるんだろう。









＊＊





私は誉められることが好きだった。





「よく頑張ったわね」




母の言葉は、とても気持ちがよくて。



私はその一言が聞きたくて。





毎日毎日、勉強した。




スポーツだって頑張ったし、クラス委員にも立候補した。



順位のつくものは、なんだって1位を取りたかった。



人の嫌がることだって率先してやった。







私を好きって、言ってほしくて。









放課後、教室で、中島くんとキスをした。








日誌を書き終えて、帰ろうとしたら。




腕を掴まれて。






「Aのこと、前から好きだったんだ」





って、言われた。








ずっとクラス委員を一緒にしてきていたし、中島くんのことはよく知っている。








だって、私も。



中島くんのことが好きだったし。









健人「いいの？今日も塾でしょ？」



中島くんは、「不良じゃん(笑)」って。




楽しそうに、言った。




さっきから私のくちびるを離してくれないのは中島くんだっていうのに。



どの口がそんなことを言うの？とか、思った、けど。




そんなの考えさせてくれないくらい、私は、中島くんでいっぱいで。








中島くんの、かわいい、や、好きだよ、は。



すごく気持ちがよくて。





それは、テストで一番をとって、誉められることよりも。






……うぅん、違うね。




よりも、じゃ、なくて。



比べものにならないくらい。








快感だった。









A「いいの。こっちの方が気持ちいいし」



私は言った。




それに、中島くんだって部活さぼってるじゃんって。




けど、言ってから思った。








私は痴女かって。




今まで頑張って頑張って、清楚系で通してきていたのに！
　






……今さら、もう遅いか。







.







.

ここにいる 2（Kento）→←楽園 (Kento)

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す