10羽 Side Bourbon ページ10
廊下の方から「ロゼ?ジンが呼んでる〜」というキャンティの声が聞こえる。こっちに向かって足音がして、僕は奥の棚に身を隠し息を潜める。
ドアを開けたのはロゼを呼んでいるジンでもなければ、パシられているキャンティでもなく、ロゼと接点があるライだった。
ライは迷うことなくロゼが寝ているソファーに近づき暫く見つめている。その時の表情は多分宮野明美にも見せたことはないであろう、愛しいものを見る表情だった。ポーカーフェイスであるライがあんな表情ができるのか、と僕がライに見入ってしまった。
彼はロゼの髪を優しい手つきで撫で、その手を彼女の頬にそっと添えてまた暫く見つめた後、手を頬から離して触れるだけのキスをした。長く口付け静かに離れた唇が名残惜しそうに見えるのは多分気のせいだ。そうだと思いたい。
そして小さな声、僕がいる距離では聞こえない三文字の何かを囁いた。その三文字は僕が聞いた彼女の名前と同じ口の動きだが少し違う。同じ文字を二回は続けていない。多分ロゼの違う名前だ。あの女にはまだ名前があったらしい。
聞き取れないことを悔やんでいる間を僕に与えず、ライはロゼに自分のジャケットをかけて部屋を出るところだった。
気付かれないように彼を盗み見ると、まあ締りのない顔していた。
こんな所を宮野明美とその妹志保もといシェリーが烈火の如く怒るだろう。
自分の恋人がこのロゼという女を自分に重ね、コネで入った組織に重ねられていた女がいる。これは僕の推測だが泥沼もいい所だ。これは宮野明美に同情するしかない。
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作者名:真城瑠雨 | 作成日時:2018年7月1日 21時