5羽 ページ5
｢トコトンついてないわね。私たち｣
｢そうだな｣
｢あいつが日取りを早くしたせいで練りに練った作戦が台無しよ、台無し。責任取らせようったって相手はもう死んでるしホンットに腹立つわ！｣
｢だが任務は成功した｣
｢成功したけどこんな小屋に暫く泊まらなきゃいけなくなったじゃない｣
｢あるだけマシだろ…｣
｢はぁ……そうね｣
組織にとって不利になる相手を消す、それが私と赤井秀一もといライの任務だった。
五日後の午後十一時趣味の悪い館で行われる取引、その三時間前にターゲットを粛清するはずだったのだが、何を思ったか日取りを早くして今日行い、私とシュウは急いでターゲットを消した。
｢誰か住んでたみたいね。缶詰があるわ……まだ日付は大丈夫よ｣
｢暖炉も問題なく使える｣
｢迎えが来るまでの辛抱、か…ねえそっちに羽織れそうなものとかない？｣
｢……見当たらないな。これでもいいか？｣
｢そしたら貴方が寒いじゃない｣
｢問題ない｣
シュウが着ていた丈の長いジャケット、そこまで厚くはないが着ているだけでもだいぶ違う。
急いで出てきた為、あの男が選んだセンスのない膝丈のドレスで胸元と腰周りにはクロスした紐が付いている。私はハムじゃないぞ。
……かなり煙草の臭いがするけれど仕方ない。
｢着替え持ってきてくれると思う？｣
｢ベルモットだったら持ってくるだろうな｣
｢申し訳ないけどジンやウォッカは勘弁ね｣
暖炉の前に腰を下ろして火をじっと見つめる。隣にシュウが座りグッと距離を縮め｢一緒にいた方が暖かいだろ｣と一言。こんな状況なので黙ってそうさせているが、もしこれを組織内でやられたら一生口を利いてやらないだろう。明美に申し訳ないが今だけだ、今だけ。
段々と意識が朦朧としていきゆっくり瞼が下がる。心地よい鼻歌が聞こえた。
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作者名：真城瑠雨 | 作成日時：2018年7月1日 21時
