Smoke and Mirrors 【Kazuma.K】 (ページ8)

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マス「いらっしゃい､お嬢さん」

カウンターで穏やかそうな初老の男性が､やはり穏やかな笑みを浮かべてこちらを振り返った。たぶんこの店のマスターなんだろう。

マス「コーヒーは飲めるかい？」

『はい､…少し』

カウンター席に座るとマスターがメニュー表を渡してくれる。ブラックコーヒーは一生飲める気がしないが､ミルクやチョコレートの混ざった甘めのものならよく飲んでいる｡
カフェラテと､ついでにベーグルも注文する。メニューを見る限り､かなりコーヒーに凝っているお店のようだ。店内には私の他に人はおらず､ゆったりしたBGMと､マスターがコーヒーを準備する音だけが響く。奥にあるテレビは私もよく観ていたアメリカの番組を映しているようだった｡

マス「カフェラテと季節のベーグルになります」

私の前に香りの良いカフェラテが置かれる。火傷しないように冷ましながら口をつけると､すっきりとしたコーヒーの苦味とミルクの甘さが広がる。
……なんだこれ､美味しい。
アメリカでよく飲んでいた某コーヒーショプのカフェラテより美味しかった。もちろんあちらも好きだが。

2つのものを並べてそのどちらも好き､というのが私の性格である。

そうしてカフェラテとベーグルに舌鼓をうちながら穏やかな時間を過ごしていると､店内にベルの軽やかな音が鳴り響いた。

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