傷だらけの僕等がいた 2 (ページ32)

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戦地にて Ki ページ32

時は様々なものを変化させていく。

傷を癒してくれるものでもあり、
何かを得たり、または失わせるものであったり。

刻々と変化していく中で、変わらないものも勿論あるけれど。

優しく、時に残酷に、流れていく時。

いつかは誰の元にも必ず訪れる死が、これらの気持ちを全て楽にしてくれるんだろうか─────。

３ years later───

中東○○ キ○アン町。

政府軍と反政府軍、外国の支援軍と民間のデモ軍までが加わって、この国の内戦は終息を迎えるどころか、日に日に拡大していく一方だった。

被害は軍の人間だけじゃない。
政府軍による無差別攻撃も激化し、爆弾投下、銃撃、拉致など、毎日たくさんの人々が死んでいく。

それこそ俺の目の前でも。

明日、どころじゃない。

１秒先は我が身だ─────。

同じ地球上で、同じ世界で、こうも違う景色が存在している。

天国と地獄のように。

最初は現実として受け止められなかった。

簡単に死んでいく人々に。
銃を構える子ども達に。
何処かの町から拉致され、兵士達と強制的に結婚させられる少女達に。

道端に咲く小さな花に付着している血痕。

片腕でもまだ銃を持つ少年。

焼け焦げた縫いぐるみ。

涙と鼻水でぐちゃぐちゃになりながらも夢中でシャッターを切った。

恐怖、悲しみ、怒り、絶望。
毎晩うなされ、嘔吐した。

それでも生きることを諦めたら終わりだ。
撮ることを、伝えることを諦めたら終わりだ。

普通に暮らす人々の命までも容赦なく奪っていく戦争の悲惨さを、無意味さを、不条理を絶対に伝えなくてはいけない。

少しでも命を奪われる人間が減る為に。
少しでも早く内戦が終息する為に。

あまりの被害の多さに、多くのジャーナリストやカメラマンが本国へ戻っていく。
政府軍にとっては外国人ジャーナリストも自分達を批判するものとして敵と同じだったからだ。

そんな中で、俺は戦争孤児や反政府軍の１組織である少年軍の子ども達と行動を共にしていた。

拙い現地の言葉で会話を交わし、一緒に遊び、寝食を共にし、カメラを向け続ける。

最初は冷めた目を向けるだけだった彼等は、やがて俺に未来を語り、夢を語り、笑顔を向けてくれるようになった。

俺はそんな子ども達をカメラに収めていく。

銃を構えた時の、政府軍への憎しみと殺意を漲らせた顔と、将来の夢を一生懸命語る少年の顔は同一人物とは思えない程違っていて。

俺は夜中、いつも涙が止まらなかった。