【刀剣乱舞】ﾁｬｱと鳴く鶯に成ったと思ったら女だったんですけど【勘違い】 (ページ5)

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三話ページ5

A視点

今度は何だ、と思い半泣きに(実際は無表情だが)なりながらも振り向く。

其処には、時間遡行軍が居た。

…………

俺は二度見したが、其処には時間遡行軍が居た。

三度見もしたが矢張り現状は変わらなかった。

…………

わぁ禍々しい赤い光を纏う短刀と脇差と打刀が二体ずついるよ！多分ここ厚樫山かな！！あと俺死ぬねこれ！！

『あああぁぁぁああッ！！！？？？』

余りの衝撃に俺の知能が五歳時に下がった後、直ぐに現実を直視した俺は絶叫し、そして全力で走った。

余りの衝撃に思ったより声が出なかったが絶叫した。

そして出来る限りの力を振り絞って走った。

然し、太刀一振りVS短刀と脇差と打刀が二体ずつ。

その差は歴然だ。俺がどれだけ走ろうともきっとすぐに追いつかれる。

どうしようどうしようどうしよう。

落ち着こうと思っても落ち着けない。

如何すれば良いか、解決策など思い浮かばない。

距離だけが縮まっていく中、俺は逃げる事しか出来ない。

きっと直ぐに追いつかれる。そして俺は殺される。

其れは清々しい程に明確で理不尽な死。

木の根に躓き、棘のある植物により皮膚が避け、息が切れて目が回り、酷使している四肢が千切れそうだった。

それでもただ、俺は走る。

死が怖い。

その一念で、喉が焼け落ちそうになりながらも、動かない脳を動かして策を巡らす。

だが、世界は甘くはない。

敵打刀が刀を振りかぶる。

まるで命を刈り取る死神のように。

脳が警告を鳴らす。

その瞬間、俺の身体はまるで別人が動いたかの様に勝手に、そして自然に動く。

俺の右手は、確かに刀を抜いた。

そしてその鈍く光る刃を、敵の打刀が俺の首に届く前に素早く振る。

めのまえで、くびがとぶ。

笠を被った人と思えぬ姿の其の首が、いっそ美しいと思える程に綺麗に空を飛ぶ。

そして、血飛沫をまき散らし、ごとりという音を鳴らして地面に落ちる。

俺が初めて見た死だった。

喉がひくつき、酸っぱい物がせりあがってくるのを感じて、刀を持っていない方の手で思わず口を抑える。

然し、胃液をぶちまけている暇はない。そんな隙を見せれば死んでしまう。

俺は、思ったよりも早く冷静になれた。

そう、これは生きる為だ。相手は人じゃ無い。大丈夫。

体勢を立て直し、震える両手で刀を構え直して、狙いを定める。

次の首が落ちる音が聞こえるのは、そう遅い事では無かった。