【刀剣乱舞】死んだら桜の神様に成ってしまったんですが。

捌話 ページ10

A視点



私は微笑みながらそこはかとなくイラァとしているが、それを無視して三日月は話続ける。



「空っぽだなぁ。」


『頭？幹？一体何が？それにしても失礼な人ね。』


「その笑みだ」


『…………本当に失礼ね…………乙女心とか、そう云うの考えないの？』


「じじいゆえ、そう云うものには疎くてなぁ。すまなんだ。

然し、だからこそ思ったのだ。お主の笑みはまるで感情と云う物を孕んでおらん。

取り敢えず笑っている、と言う様な笑みだ」



喉から、ひゅと云う音を立てて息が漏れた。

何コイツ…………こわ…………



私は何とか微笑みを壊さずに応対する。もはや女優である。



『…………何時でも、出来るだけ美しくいたいと思うのが女の本能だわ。

だって、それが一等美しいもの。花は咲いている時、人は笑っている時が、一番美しいに決まってるわ。』


「はて、どちらのどのような時も美しいと俺は思うぞ？」


『そうかしら。けれど、人間はきっとそんな風に思わないわ。永遠を望むはず。

だっていつも、桜が花を咲かせるのを心待ちにして、散ると途端に興味をなくすもの。』


「しかし枯れ木にも趣はあるだろう？」


『確かに桜のどんな姿も愛してくれる人たちはいるわ。けれど、悲しい事に少数派よ。

大多数は美しい時が長く続く事を望むの。だから私は美しく在り続ける事を願うの』


「ならば何故あの歌を詠む？」


『…………そう云う気分だっただけよ』



やべぇ自分でももう何言ってるか分からなくなってきた。めっちゃ矛盾してるし。

目の前の三日月はやっぱり読めない微笑みを顔に浮かべていらっしゃるし。

玖話→←漆話

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す