岡本さん家の恋愛事情２。 (ページ9)

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すがる手には優しさが詰まっている。ページ9

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お母さんが亡くなったのが、高校上がるとき。
奇しくも、裕翔と慧が自然消滅した直前だった。

裕翔と連絡がとれなくなり、お母さんの具合も悪い。
元々不安症な慧が不安定なのは感じていた。

お母さんの死で不安がる幼い2人に悟られないよう、気丈に振る舞う姿はいつか壊れてしまうのではないかと怖くなった事を覚えてる。

だからあの日真っ暗な部屋で静かに泣く慧を離せなかった。
そして今…声を殺しすがり付く慧はあの時よりも苦しそう。
離すまいと抱きしめる手を強めた。

どのくらいそうしていたのか…身体を離せば力か抜け疲れて眠る慧。
静かに抜け出して起きていた圭人にﾍﾞｯﾄﾞまで運んで貰う。
kt『…慧姉さん軽すぎ。』
何か言いたげな圭人を押し部屋を後にした。

寝付けぬ夜が明け朝になっても、慧は起きて来なかった。
仕事休むと言ってたし放っておこうと思っていても、気になり落ち着かない。

ym『…なるほどね。ごめん。それ俺のせいかもしれない。』
独りでいたくなくて無意識に電話をした私に、山田さんは会わない？と、いつもの喫茶店に誘われた。
山田さんに促され慧と裕翔にあった事を粗方話せば、突然謝られる。

意味のわからない私に、山田さんはけしかけたのは俺で関係を崩してしまったようなもの。とひたすら謝る。

「違う。慧はもう限界だった。遅かれ早かれこうなっていた。慧にとって変わりがいない特別な人が裕翔であって、他の男のようにあっさり心が切り替えられない。信じたいのに信じられない自分に嫌悪しながらも、それでもずっと想ってたから手放せなくてもがいてた。ﾃｷﾄｰで何でも器用にこなしているように見えて、人一倍臆病で繊細で愛を欲している子なの。」
ym『…いくら知らなかったとは言え、ｱｲﾂはずっと慧さんを傷つけていたのか…。なんだか切ない話だな。』

「私だって…慧の気持ちに気づいていた癖に何もしてあげれなかった。もっと早くにぶつかってこいって諭していれば、2人はこんな事にならなかったかもしれない。」
そう話し溢れる涙を止められずにいれば、優しく手を握られる。

ym『それは違う。光さんは慧さんにとって心の支えで全てわかりあえる唯一の人だろ。どうせ、ｱｲﾂは慧さんを諦められない。高校からずっと話を聞いてきた俺が言うんだ間違いない。慧さんの心を砕いたのが裕翔なら繋ぎ合わせるのも裕翔。腑抜けやがったらぶっ飛ばしてやる。』
そう言って笑う山田さんに少し心が安らいだ。