6.百面相。 ページ6
それから1週間経った週末。
私はまた、自転車に乗ってスーパーへ買い物に。
そして先週と同じように公園の中を走って家へと帰っていた。
「.....あ」
脚を広げてベンチに座りぼーっと空を見上げてるキャラメル色の髪が、目に入った。
自転車を停めて彼を見てると、あっちも私に気付いたらしく「あ」と口を大きく開けた。
「お姉さんだ！」
わー！って手をブンブン振ってる。
「今日もあっついねー」
目をキュッと瞑って、眉間に皺。
汗が流れたのか、彼はおでこを掌でゴシゴシした。
「何してるの？」
「何もしてなーい」
「え？」
「アハ」
何だか妙に気になってしまって、自転車から降りて彼に近寄る。
彼は私を見上げて、ヘラっと笑った。
その傍らには、こないだと同じ大きなリュック。
「凄い荷物だね。やっぱり家出なんじゃないの？」
笑いながら言うと、「家出...では無いけど…」と口篭った。
「あっ！自転車、調子良さそうだね！」
「え？あ、うん。あの時はありがとう」
「ううん、男子はチャリ直すの得意だからね！」
そうなの？と思うけど、確かに父親もこの手の修理が上手かった気がする。
...とか考えてると、彼が「ふぅ...」と小さく息を吐いた。
「どうしたの？」
「あ...ちょっと疲れちゃって...ほら、暑いからさ！」
「暑いけど...じゃあ、家に帰ったら良いんじゃない？」
「家...が、無いからさぁ」
アハーと力無く笑って、ちょっと気まずそうに俯く。
「家が無いって...何で？」
「アパートの大家さんが立ち退きに遭っちゃって、住んでた僕も追い出されちゃった」
「え！？今時、そんな事あるの！？」
「ねー、何時代なのー？って感じだよねー」
「平成も終わるのにねー」なんて、彼は口を尖らせた。
「御実家は？」
「.....」
「ん？」
「実家は、元から無いの」
彼の視線がゆらっと揺れたのを見て、訊いちゃいけない事だったと悟る。
黙った私を見た彼は「そんな顔しないで？」と微笑んだ。ニコッ、と柔らかく。
「別に実家が無い事なんて僕は気にしてないし、むしろ今自分の家が無い事の方が大事件だから！」
「確かにそれは大事件だね」
「とりあえず、日雇いバイトで食い繋いでるんだけど...難しいよねぇ」
「貯金は？」
「してるタイプに見える？」
彼がキャラメル色の髪に指を入れて、悪戯っ子みたいな顔で頭をポリポリした。
「あー暑いー！」
そして突然、叫ぶ。
百面相みたいに変わる表情が可笑しくて、私はつい笑ってしまった。
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米(ヨネ)(プロフ) - ずっと読みたかった『アディクトインダストリー』やっと読める日が来た事に感動(T^T)同じ人のお話を並行して読むには頭が追いつかないようで(笑)他の相葉さん読んでる最中に登場したレイさんの相葉さん。ずっと保温させていただいてました。満を持して！お邪魔します^^ (2019年3月29日 4時) (
レス) id: c17294886d (このIDを非表示/違反報告)
にゃん(プロフ) - 明けましておめでとうございます。櫻井社長が何か仕掛けてくるのか、こないのか。気になる。３月まで忙しくてリアタイで読めないの(泣)だから変なタイミングでコメントする事をお許し下さい(笑) (2019年1月2日 9時) (レス) id: aab6d8833f (このIDを非表示/違反報告)
rei(プロフ) - みっちゃんさん» 楽しんで頂けててよかったですー(*´ω｀*)cube、私も好きな映画だったのでお話に出したいなぁと思って(*´ω｀*)新章も楽しんで頂けますように☆ (2018年12月30日 12時) (レス) id: 7992a9c5f3 (このIDを非表示/違反報告)
rei(プロフ) - なおさん» 何か、例えばニノちゃんのお話だと物凄く反応を頂けるんですけど今回はあまり楽しんで頂けてる雰囲気を感じられなかったんですよー(^◇^;)でもお声掛けして頂けて良かったです！最後まで頑張ります(*´ω｀*) (2018年12月30日 12時) (レス) id: 7992a9c5f3 (このIDを非表示/違反報告)
rei(プロフ) - こっしーさん» こんにちは！私もこんなワンコが家にいてくれたら、本当になんでも頑張れるしすぐ家に帰りますー(*´ω｀*)続きも楽しんで頂けますように☆ (2018年12月30日 12時) (レス) id: 7992a9c5f3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：rei
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?t=reika72
作成日時：2018年12月5日 0時
