言えない。 ページ10
そんなわけで。帰宅いたしましたが。
なんっで私が……バカ兄貴相手にドキドキしないといけないんだっつーの。
「……ふんっ」
そんなもん、鼻息で飛ばしてやる！おぅおぅっ？
私にはすんばらしい計画があるんだから。思いついちゃったんだから。
……邪魔されてたまるかー！
だいたい。あいつ居ないんじゃないの？おデートでもしてるでしょうよ。
そのほーが都合いいわ、さっさと荷物まとめて置手紙で出て行こう。
まさか兄貴相手に“お世話になりましたー”とか言う必要も無くね？
「……」
そして玄関をそぉっと開けて様子を伺う……までもなかった。
休みの真昼間から居るじゃん！バカ兄貴の笑い声、響く響く！
……仕方ない。
そのまま居間に向かえば、陽平はテレビを観ながらゲラゲラ大笑い中だった。
「おぉ？不良娘！随分とお早いお帰りでー。どうしたー？翔は？」
「しょ……あいつは……仕事に決まってんでしょうが……」
「ふーん。あ、ちょうどいいや。おまえ自宅待機ね」
「は？」
「にーちゃん今から迎えに行って来るからさぁ〜。イイコで待ってるのよ〜」
「なに？迎えって誰！何？私は用事が、」
「このまま翔の所に行くつもり？」
「えっ！うっ？」
「だったら余計に。ちょっとだけ時間ちょうだい？」
畳で横になってたぐうたら野郎は、勢いよく起き上がると何やらいつもと様子が違う笑みを浮かべて私の肩を叩いた。
……気持ちわるっ。
「……あー。まさか、彼女？だったら前もって言ってくれりゃ良かったのに。こんな小汚い所に呼ばなくたって、」
「んー？たまたまよ。あーそれとさー翔のことはまだ言ってないから。式に来てくれるの決まったら、実はお友達でしたー☆って言うけど」
「う、ん？」
「まぁ、つまり。おまえも別に何も言わなくていいし……この先も言わないのよ？将来の妻ですぅとか」
「っ！言うわけないっしょ！何言ってんのさっ」
「あー。にーちゃん忙しいわー。守るもんがいーっぱい増えちゃってさー」
「はぁ？」
「おまえもちゃんと、そういうのを常に自覚しておきなさいよ。浮かれてんのも可愛らしくてイイけどね」
「なっ！浮かれてなっ！」
「……俺の親友に迷惑かけんなよー？」
バカ兄貴のくせに……バカじゃない時がある。
そんなこと分かってるって言い返したかったのに、
「それが、おまえ自身を守るためでもあるんだからね」
……かなり本気の忠告なんだろうなって。
そう思ったら、何も言えなかった。
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作者名：みつな
| 作者ホームページ：
作成日時：2017年5月15日 0時
