テレビ。 ページ9
目を開けると、翔がすぐそこに居る。
あー。しあわせー。
なんて思う朝、これで3回目……なわけで。
私はそう思いたいがために絶対翔より先に起きたくて。毎日やたら早起き生活だわ。
「……A」
「っ！……お目覚めですか？」
「ん。今何時……」
目が開かない翔が、無駄に手を伸ばしてスマホを探ってる。
いやいや、そこじゃないわ。惜しいな〜もうちょっと右だな〜。
「ふ、ふふふっ」
「あー……くっそ、笑ってんなよ……取れよ」
「いーやーだー」
「おっまえ……」
弱弱しい声で、私の体にポスンと手を当ててくる。
眠そうで怠そうな翔は、私にとっちゃ貴重な“隙間”というか。
何から何まで「オレ、カンペキ☆」みたいなところがあるから、こういう姿は飽きない。
「さてとー。そろそろなんか作ってこよっかな。翔はもう少し寝ていられるよ」
「……」
「ちょいと。離せ」
「……やだ」
「やだって。朝メシにありつけなくなりますけども？」
「……もーいい……今日は。寝る。だりぃ」
「プ……ププッ！」
朝起きられなくて駄々こねてる子供みたい。
翔はゴニョゴニョ言いながら、私を抱き枕にしたままで。
「今日、夜いねーんだよな」
「ん？うん。そうね、だから一回陽平とも荷物の話をして、」
「……やだなー」
「へ？」
「なんか。変。おまえ居ないとか……変」
「ヘンと言われましても。アンタずっと一人暮らしだったんじゃないのか」
「テレビが突然無くなるような違和感」
「んは？あたしゃテレビか！家電なのか！」
「ははっ。それに近い存在感だよな、スイッチ入ったらずっと勝手に喋ってる」
すっかり目も覚めたらしい。口調がしっかりしてきた。
「やだなーなんか」
「分かったってば。少しくらいテレビ無しでも生活しなさいよ、ったくもー。小学生か」
「早く戻って来いよ」
急に、変わるんだから……。
好き放題からかっていたのに、急にそうやってスイーツ野郎になる。
「……ぅん」
私は大人しくギュッてされたまま、ショウサクライの匂いを目一杯吸い込んだ。
「というわけでー。朝メシは要らん」
「なんでそうなるのか」
「……惜しみたいから」
「んは？」
「皆まで言わすな。ばーか」
「ば……」
バカとまで言わなくてもよくない？
「いいんですぅー。俺は、今朝は惜しむことにしたんですぅー」
「……」
私が居なくなることを“惜しむ”らしい。
翔は本当に、ずっとただ、ぎゅっとしたままでいた。
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作者名：みつな
| 作者ホームページ：
作成日時：2017年5月15日 0時
