あそこにも、ここにも。 ページ7
「で。明日は家戻るね、荷物の事も色々あるし」
「へいへい」
「……あーのさ、」
「んー？」
絶賛お仕事中なのは見て分かる。それでも私は、しつこく声をかけたかった。
「えと。だから……一緒……」
一緒に寝よ？♡
なーんて小首傾げるくらいのこと、どうしてできないんだろうかワタシ！
絶対可愛いのにぃ。ショウサクライもキュンキュンするのにぃ。
「……フッ」
「ふ？」
「一緒に？寝たいの？」
なんで翔のほーが小首傾げるかね？しかもまた、なんかちょっと可愛いし！
……くっそぅ。
「う、」
「はいはーい。寝ましょう寝ましょう」
「お！」
負けじと可愛く頷くのも失敗した。
翔は私の背中を押して、グイグイ寝室に連れて行く。
そして一緒のベッドに一緒のタイミングで潜り込む。
考えてみれば、これは初めてで……そりゃ、この数日アハンな感じではあったけども。
そっか。こういうのも、幸せだなぁ……
「なぁ。さっきの話の続きだけどさ」
なんて私がひとつひとつの事に感動を覚えていると、すぐ隣に居る翔が私をジィッと見ていた。
「さっきの？銭湯守る、」
「違う。その前。気になって眠れない話」
「……何デスカ……だから今日は別に、」
「俺がそうなったら、おまえはどうしてくれんの？」
「へ？」
眠気なんて一瞬で吹き飛んだ。
なんですと？全然想定外の方向から話がやってきたんだけど。
「おまえってさ。俺が大好きだっただろ、ちっせー時から」
「……ぇ、どう……だったかしら？ハテ？」
「ハァめんどくせぇ。そうだっただろ。けど、別に俺ん所に来なかった。どころか避けやがって」
「えぇぇ……今さら？」
それは否定しない。
バカ兄貴、陽平の幼馴染である“よくわかんないけどしょっちゅうそこにいる優しいイケメン兄ちゃん”に、私はずーっと恋心を抱いていた。
翔は私の王子様で。私が結婚してあげると一方的に決めつけていて。
……でも。翔は、あれよあれよと私とは縁のない世界に行ってしまった。
「だって……遠く感じるの嫌だったから」
「おまえが勝手にそう感じてただけだろーが」
「だって！本屋行けばショウサクライ。テレビつければショウサクライ。しまいにゃアンタ、私の愛用シャンプーにまで手ェ出しやがって！ドラッグストアまでショウサクライ……」
「それ関係ねぇだろ」
「……居場所の違いを、感じないほうが無理だよ」
全ては所詮幼かった私の夢物語と現実を知って、私は翔と直接絡むことを避け続けた。
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作者名：みつな
| 作者ホームページ：
作成日時：2017年5月15日 0時
