女心を考える。 ページ23
“今着いたよー。”
“先に頼んじゃうよー。”
“ビール飲んでまーす。”
“イカ！ウマー！”
20時頃、どこの彼女だって勢いで次々届いた親友からのメッセージは、最後のほうはもはや楽しみになっていた。
「わりぃ、遅くなって」
「おっつかれー！まぁまぁ座って！はいはい、とりあえずはビールかね？」
会った瞬間からのテンションのうざ……いや、高さは、飲んでるとか関係無いと思われる。
届いたビールで乾杯すると、陽平はぷはぁ〜と言いながら部屋をぐるりと見渡した。
「イイ感じの個室だねぇ。えろいね！ひゅぅ！」
「……そのセリフどっかで聞いた覚えがあるわ」
「なになに？」
「いや。で、準備は？順調？」
「あっちが頑張ってくれてるね。それでさー聞いてくれよーこの間ちょっと喧嘩した。というか泣かれちゃってねー」
「は！なんで！」
「俺っち、何にもしてくれないってさ」
「何にもしてねーの？」
「違うよぅ！結婚式ってさ？嫁さん主役にしてあげたいじゃん？だから俺っち、言ったのさ“君の好きなようにしたらいいんだよ、ベイベ☆”って」
「……マジでそう言ったのかよ」
「若干、脚色したけどもー！そういう系統の事を言ったんだよー」
おいおいおいと泣き真似までして、最初から絡んでくる。
これが飲んでるからかどうなのか、見分けが付きにくい。
……そういえば。アイツもこんな感じだったな。マジで兄妹よく似てるわ。
「ふはっ」
「っ！はぁ〜？大親友が愛の相談をしているというのに！」
「ははっ！愛の、なのな？恋じゃなくて。なんかいいな」
「なっ！そういう話じゃないのさ今言いたいのは！男心を分かってくれよぅ、っていう話！」
「って。言えば良かったんじゃねーの」
「でもさぁ！意見言い過ぎたら“それってアタシを否定するの！”って勢いで来そうだし？何も言わないと“何でもいいばっかり、もうっ！”ってさ？女心は複雑だもん。じゃ、どう言えば合格よ？そのライン、俺には読めないもん」
「なるほどね」
「そういうの、Aにはありませんこと？」
ここで、出すのか。妹の名前。
いや“彼女”としては確かに聞かれるような流れかもしれないが……
俺は全く準備していなくて、若干動揺した。
「あー……何食いたいか聞かれて何でもいいっつって文句言われた、とか」
「ははっ！言いそう言いそう。あいつさー、料理好きなのよ」
そんな大したネタじゃねぇと思ったのに。
それだけでも陽平は、嬉しそうに返してきた。
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作者名：みつな
| 作者ホームページ：
作成日時：2017年5月15日 0時
