異星人。 ページ21
私はショウサクライとは全然違う。
家に居ようが仕事だろうが大して変化のない顔で、今日も出勤する。
……つけなくても、ついてる気がするなぁ。
この部屋にいると、ショウサクライの香りがプンプンして。
私自身は余計な匂いをくっつけないけど、まだ空気中に存在する翔のそれを纏っている感じが、
ちょっと……悪くないなんて思ってフフッと笑いながら外に出た。
「おはようございまーす」
「あ！Aさん、ちょうど良かった。今週の新作入手です♪」
「お。マジか。いただくいただくー」
後輩の依織ちゃんは、今日も変わらず可愛らしい。
彼女のオススメコーヒーを飲むのが日課な私、そろそろお支払するべきじゃないかしらん？と思い続け……まぁ、いいや。またランチでも奢ってあげよう。
「ねぇ。そういうスカートってどこに売ってんの？」
「え？普通に売ってますよ、こういう感じ今年流行りだから結構どこでも。見かけないですか？」
「……私の星には売ってないわね」
「やだぁ。私も同じ星の住人ですよぅ！」
きゃはっと笑い声まで可愛い依織ちゃんは、パシンと全く痛くない子猫パンチくらいのスキンシップを私に送りながら、他の人にも挨拶と笑顔とコーヒーを惜しみなく振り撒く。
……いっやぁ。絶対私の星には無いって。アンタどこから来たよ？
その愛らしい後姿を見送りながら、コーヒーを思わずズズッと啜ってしまう私。
「……私のが実は異星人とか？……なんつって」
トイレの鏡を見て。
彼女に比べると随分気合いの足りないメイクだな、おい。と思うけども。
「いいんだいいんだ！外面だけじゃ仕事はできん！中身で勝負だ！試験もあるぞ☆」
なんて気合いを入れ直してフンフンッとトイレから出たところで、
プフッておかしな笑い声が聞こえて、私はびくぅっと後退した。
「独り言だったの」
「かっ！お……ます」
「最近、まともな挨拶できないよね」
「……おはようございます」
課長は、まだクスクスと笑いやがる。
大体ね、レディーのトイレを盗み聞きするなんて大問題じゃないの？おぉっ？
ショウサクライ相手だったら、猛抗議してやってるところだわ！
……なんて。この人相手じゃ1ミリも言えない。ミジンコレベルでも無理。
「そうだよね。試験もうすぐだったね」
「はぁ。そうっすね」
「返事が雑だよね」
「すみません。育ちの悪さが最近隠し切れなくて」
「ははっ」
……同じ部署っていうのは厄介だ。
並んで歩かない理由が、見つからない。
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作者名：みつな
| 作者ホームページ：
作成日時：2017年5月15日 0時
