オッサン。 ページ19
「いっただっきまーす」
相変わらずひっくい声だな。
ショウサクライは、朝からよく食う。
私が作る前はどうしてた？って聞いたら、ヨーグルトとかマフィンとかアイドル仕様のフザけたこと言ってたけど。
その割には。私が作った和朝食を、ガツガツ食う日々が始まっている。
「うっめ。今日のちょっと濃い目？」
「うそっ。濃かった？」
「いや？俺はこんくらいが好きだけど」
「だめだだめだ！あんたもうオッサンなんだから塩分控えめにしないと。そっかぁしまったなぁ……」
「……大きく否定もできねーけど。なんか腹立つ」
オッサンはブツブツ言ってるけどさ。
私は一度出した味噌汁を強制的に引っ込めて、真剣に思うわけですよ。
これからは食事管理くらい、私がちゃんとしてあげないとね……
私が作ったモノが、大げさでなく薬にも毒にもなるってハナシでしょうよ。
元々、薄味生活にはこだわっていたのよ。じーちゃんが居たから。
それにしても……やだぁ。アタシったら責任重大☆
っていうか、ショウサクライの運命を握ってる感じ？どうにでもできちゃう？……ぐふふ。
「はい、どーぞ。薄味にしたからねー健康第一！」
「おっまえ。水足しただけだろ」
「ふんふーん。文句があるなら毎朝自分でやれ？」
ウインク付きで答えると、まるでにっがい味噌汁飲んだみたいな顔をするショウサクライ。
だけどすぐ、玉子焼きを満足そうに頬張るから……
愛する人の食事を毎日作れるのって、とっても幸せなことなんだよナーと私はしみじみ思った。
「ねぇ、マイダーリン」
「ぶほっ、」
「愛してるって言って？うふ？」
「……朝っぱらから何ごっこだよ」
「アメリカンブレックファーストごっこ？うふ？」
目の前で頬杖ついてウフフと笑う私を、気持ち悪いもんでも見る目のまま、黙々とほうれん草を食すマイダーリン。
私の視線にも耐え抜いて、やっと口の中を空にしてお茶をゴクッと飲むと冷めた声を出した。
「意味がちげーだろ」
「アメリカンなブレックファーストじゃん」
「もう突っ込むのもめんどくせぇ」
言い残して、ごっそさーんてテキトーな挨拶付きでサッサと退散しやがった。
ついこの間は朝食も惜しむほど私にべったりだったくせに！
なんと今日は冷酷なのか。いわゆる飴と鞭ってやつか？おぅおぅ？
せっかく私が、アナタの身体のことはワタシに任せて☆って、熱い決意を秘めたというのに！
「ふんっ。オッサンダーリンめ」
呟いたら、洗面所から派手なくしゃみが聞こえた。
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作者名：みつな
| 作者ホームページ：
作成日時：2017年5月15日 0時
