愛しちゃってる。 ページ16
「愛しちゃってるんだねぇ〜弟よ〜」
どう出るかと思ったけど。
やっぱり陽平は、そっちのフザけた方向で返してくる。
「さぁね？おまえほどじゃないんじゃねーの」
「あら嫌だ！そんなコト言っちゃっていいのかしらーん」
「新種のオネエか。そんなので結婚前の溢れる幸せ感、誤魔化してんじゃねーよ」
「ふ、ははは！……ねぇ翔。一回さぁー飲み行きたいなぁー」
「おぉ。いいね」
「独身最後のハメ外させてくれよぅ！新宿二丁目辺りでさぁ！“オネエ”サンはべらしてさぁ！」
「……一人で行け」
「えぇー！銀座で“オネエ”チャンのほうでもイイけどぉ」
「……あのなぁ」
どこまでがマジなのかわかんねぇ。
たぶん、どっちかつったら二丁目の気がする。よーへーなら、ああいう人たちとソッコー仲良くなりそうだわ。
「“普通”の、飲みだったら付き合ってやる」
「あそー。弟クンの奢り？やたー！お財布忘れよっと、ひゃほーい☆」
「マジで兄妹だな」
「なんですって？」
「なんでもない。とにかく、普通に、食いたいもん考えといて」
Aと久々に二人で食事した数ヶ月前の事を思い出した。
その約束をする時、コイツも財布忘れるワ〜とか図々しさ全開だった。
酔ってないくせに酔ったフリなんてして、悩んでいることを誤魔化してきたりして……
まったく。不器用なんだよ、おまえは……。
色々思い出しながら、よく似た妹のほうの柔らかな頬に触れると、微かに睫毛が揺れた気がした。
あー。可愛いな……くっそ。
「じゃ、またな」
いたっていつも通り、自然に通話は終えたはず。
でも内心の俺は、落ち着きがなくなってた。
もっと、Aに触れたくて。
……ちゃんと、触れたくて。
「……A」
返事なんてしないのはわかってるけど、思わず呼びかけていた。
スマホを放ってもう一度、今度はしっかりめに頬を手のひらで包んだ。
スゥスゥと寝息をたてる姿が無防備であどけなくて……儚くて。
「愛しちゃってる……よなぁ、どう考えたって……なぁ？」
でも言えるわけねーだろ、兄貴相手にそんな恥ずかしいこと。
俺と陽平は親友で。その妹と俺が……なんて状況は、複雑で。
でも陽平は、俺が“妹”のことを話すほど安心するんだろうから……
奴がどんだけフザけてきても、俺は伝えるべきところを伝えていってやらないといけないんだよな。
「おーい……ははっ！熟睡中か」
頬をプニプニ突いても、Aは起きる気配がない。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 4482人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：みつな
| 作者ホームページ：
作成日時：2017年5月15日 0時
