不動。 ページ14
いつの間に寝ちゃってたんだろう。
まだぼんやりする頭で天井を見つめたまま、手を動かして温もりを探した。
けど。求めるものはどこにもなくて……
「ははっ！マジで？へーそうなの」
求めた人の楽しそうな声があっちのほうから聞こえてくる。
なんか現実的じゃない。遠い。
そっか……誰かと電話してる……？
明らかに私に向けてじゃない笑い声に胸がキュッて締め付けられる。
翔の触れるもの、翔の見るもの、翔が言葉を紡ぐもの、その全ての対象が私だったらいいのに……
「……ハァー。だっめだこりゃ……」
だって。そんなことを結構本気で考えちゃった今の私、ヤバ過ぎだろう！
ベッドに顔面押し付けて突っ伏したところで、顔が醜く潰れるだけなんだけど。
一度考えちゃったことは、無かったことにはできないし。
もしこれを翔に伝えたら。
そこまで考えちゃってるワタシ、引かれてウザがられるんだろうなー……。
「おー。聞いたよ。あー今？……寝てる……な、うん」
びっ！くりした。
起き上がろうとした瞬間、声が急に近くで聞こえて。私は引き続きベッドで顔を潰すしかなくて。
「グースカよく寝るよ。ん……ちゃんと眠れてるっぽい。たぶんね」
クスッと確かに笑いながら、私の睡眠事情を電話でご報告するショウサクライが間近まで迫ってる。
……陽平？しか居ないわな、そんな事知りたい奴も話せる奴も。
「奥ゆかしいらしいじゃん」
ベッドが微かに沈む。
ほんとに此処に居る。求めた人……そう、少しも離れたくない。それはそう、なんだけど……
「Aが言ってたよ、一歩下がった美人だって。え？……ははっ！それ、おまえに言わなきゃだめ？」
ちょ、ちょちょちょ……櫻井サーン！
そんなに楽しそうに、此処でお話しなくてもよろしいんじゃないでしょかー？
「まぁ。美人の定義は、それぞれじゃね」
頭ー！撫でないでー！
フッとかクッとか笑いながら、ゆっくり何度も撫でてくる翔の手。
を感じながら、私はベッドに突っ伏したまま、一ミリも動かない状況で居るしかなく。
「そりゃね。可愛いよ。すげー……なんつーの？昔のコイツをよく思い出すんだわ、最近」
……たぶん、だけどね。
悪口は言われてないわけで。
なんなら非常に良い雰囲気なの、声から感じるというか。キュンキュンしちゃうっていうか。
だから。すごく、すごく、すっごーく！
私のことを話す翔の顔、今すぐ見たいんですぅー！
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作者名：みつな
| 作者ホームページ：
作成日時：2017年5月15日 0時
