ねだる。 ページ13
なんか、納得いかない。
「それで言ったら、台無しにしたのはあんただから！」
「っは？いきなりの文句？すげぇ納得いかないんですけどー」
「だって！フッツーに帰ってきてフッツーに話し始めちゃってさ、」
「そりゃ俺んちだからな。普通に帰ってきて何が悪い」
「だから！感動のご対面が……そうよ！あんた“はじめてのおつかい”観たことある？自分ちに帰るのだって冒険と感動でいっぱいなのよ？おぉっ？それなのにあんたは俺んちだなんだ、くっそ可愛くない！」
「ちょ……なんでそうなった。“台無し”に話戻せよ」
あぁ、そうだった。私のすんばらしい計画……
大きなスーツケースをどーん！と玄関に置いておけば、翔のことだから察して部屋に入ってきてくれるんじゃないかと思ったの。
サラッと今日からお世話になりまーすって言っちゃって？まぁまぁこちらこそ、みたいな？
お互い照れつつも、思ったより早く新生活スタート☆っていう。そういうの期待してたのに……
「あーもー……そういう意味で言うなら、とにかく……俺は“普通”にしてないと不安だったよ」
翔が小さく呟いて、俯いた私の頭をゴツンとグーで叩いて今度は顔面をグリグリ当ててくる。
何？不安って。急にそんなこと簡単に言っちゃってずるい。
そんなの言われたら……私だって、まだまだアンタとのこれからが、なんか脆くて……
「……だから。翔がフッツーだから、私も改めて言えなかったんじゃん」
「ほぉ？何を？」
「だから！何をって、何……さ」
「なんだよ。言えよ」
言わせる気、ある？
そんなにギュッて抱きしめられたら……胸が苦しいよ。
「早く……言ってよ」
「っ、」
これは……はじめてのおつかい、じゃない。おねだり……か？
翔が俺様もＳっ気もない言い方で、ただ消えそうな声で……言うから。
「……今日からお世話になりま……ウッス」
「体育会系、いらね」
「……おそばに置いてください……まし」
「取って付けた奥ゆかしさも不要だから」
「痛っ！もっ！」
「フッ。普通に言えよ」
デコピンの痛みを私が摩るよりも先に、チューに癒される。
あぁもう。なんで泣きそうなの……こんな予定じゃなかったはずなのに。
「私ね、ここに居ることになったから」
「決定事項伝達かよ」
ねぇ。私はやっぱり可愛くない。
だけど……
「……ずっと一緒に居てね？」
「はいはい」
あとで、ちゃんともう一度言おう。
このキスが終わってから……ね？
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作者名：みつな
| 作者ホームページ：
作成日時：2017年5月15日 0時
