流される。 ページ12
「ちょ、翔。アンタ帰ってきたばっかだし、」
「……で？」
「で、じゃないし！色々やることやりなさいよ！」
「ふーん。……やること……」
「ばっ！そうじゃな……っ、」
すっかりそういう流れになっちゃってる。
あぁもう……これ以上進んだら、流されちゃう。
……今日はダメ。それは嫌だ。
「おっ、……んだよ？」
いよいよ服の中に入りかけた翔の手を掴んで、阻止した。
翔はそんな私を見て、大きな目をますます大きくして数秒ジッと見て……
すぐに、顔を背けて噴き出した。
「ぶふっ。なんだその顔」
「かーっ！笑うなぁ！ほんと、ちゃんとまずやることやってさ。風呂？仕事とか？ほら、」
「大丈夫でーす。自己管理くらい出来るんでね……じゃ、再開〜」
「っ！ちょ、まま待っ！だって！そしたら私が寝てる間に仕事するでしょ？」
「……ん？」
簡単に倒されて服も捲られた。
けど、お臍らへんをひと舐めしてきたその髪を掴んで止めれば、翔はだからどうした？って顔を作って首を傾げた。
「だ……から。ひとりで寝るの、やだ……し」
「寝てたらわかんねーだろ。どうせグースカ寝るくせに」
「っそ……かもだけど、やなの！」
それだけじゃなかった。
確かに寝てる時はいようがいまいが分かんないけど、でも……
そういう話じゃなくて。翔が無理するような状況を作っちゃうのは嫌だ。
気づかないうちの無理が積もって、翔が疲れて、一緒に居ることが嫌になったりしたら……
「……っつーかさ。おまえ今日何しにうち来たの」
「えぇっ？何って！」
「俺の勘違い？そこそこの荷物があったけど。このまま暮らすことにしたんじゃねーの？」
「あ……それ、だから、」
「それ取ってきたりするのに結局一回帰ったわけね？で、陽平の彼女とたまたま会った、ていう流れ」
「……ん、と。間違ってない、けど」
「だよなぁ？あーびびった！」
「っえ？え？」
「おまえ何にも言わねーからさぁ」
翔の声が急に変わった。
明るいような、何かを吹っ切ったような、そんな声で私を抱き起して……また、私を後ろから抱える。
「おまえ、わけわかんねーから。一度荷物置いとくだけーとか言いかねないし」
「……ほぅ？」
「結局引っ越すのかなんなのか……今だってまた帰んのかもってさ、」
「ぇ……そんな話？」
私が思わず首を後ろに向けて翔の顔を見ようとしたら、
「見んな。ばーか」
「っぶ！」
なぜか、バチーンと掌で目を覆われた。
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作者名：みつな
| 作者ホームページ：
作成日時：2017年5月15日 0時
