ぎゅっとしたるから -正門- 4

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私の知っている"未来"が遠く離れていく。

NEWSのことも然り、
私はもう、彼らの真の姿を見失っている。


それは自分自身のことも例外ではない。


かつて、シゲアキさんの綴った一説が
脳内をぐるぐると彷徨う。


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"セロリは語り始めた。あのときの神様は難しくて
理解できなかったと言ったが、それほどでもなかった。

この宇宙は無数の時間軸で出来ていて、
例えば1秒前の時間軸と今の時間軸と1秒後の時間軸は
全てパラレルに存在していて全くの別物であり、
そのためどの時間軸の俺も完全に独立した存在で、
いわば他人ということらしい。

神様に玉ねぎが現れたのもあの神様の時間軸だけ、
セロリが現れたのもこの時間軸だけといった具合なので、違う時間軸にいる自分と対面しても干渉して歪みが生じることはないし、過去が変わったりもしないので、
パラドックスに陥ることはない。

玉ねぎやセロリにはそのパラレルな時間軸を
自在に行き来できる能力があるとのことだった。"

(引用:｢傘をもたない蟻たちは｣内
『おれさまのいうとおり』)
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彼の言葉を咀嚼するならば、

私は玉ねぎであり、セロリであるということだ。


この世界の自分自身と接触を図ったことはないが、
深神ほたるという名の架空の人物が存在しており、

そして、彼に乗り移ったかのように
私は 深神ほたる として生きている。



パラドックスに陥ることはないと彼は言ったが…







末澤｢おーい。ほたる！はよ来い！！｣

『はーい！』


スマホを拾おうとして手を伸ばす。

その手は床を貫通し、
勢い余って体勢を崩し転倒した。


『痛った、！！…えっ、？』


床に放置されたままの微動だにしないソレを見て
違和感を覚え、

自分の右手に視線を移す。


肌の色が透け、指先は
判別できないほどに消滅しかけていた。


『ひっ、、ッ！！！』


咄嗟にその手を払うように振るが
自分自身の身体なので捨てることもできず、

ゴシゴシともう片方の手で擦る。

肌の感触が戻り、
何事もなかったかのように右手が戻った。

透明がかっていた指先も、色を取り戻して。


恐る恐る触れたスマホ。

金属の冷たい感触。


私は怖くなって、誠也くんの元に走った。






この状況を鑑みる限り、

私の身勝手なタイムリープによって
この世界にバグを起こしている可能性があった。


それによる弊害が、今まさに
私自身を蝕んでいることは明らかだった。

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