きみとぼくと【∞／短編集】6

愛と愛のせめぎ合い【紫×橙】 ページ8

○【残酷な祈り】別視点


最近、マルの様子がおかしい。


そう感じるのはきっと俺だけやろう。



この違和感がなんなのか、必死に考えた。


３日後に分かった。




メンバーを見つけて笑顔になるまでの過程の中で


ほんの一瞬、顔を歪めるようになったこと。



いつもつけていたブレスレットを見なくなったこと。



マルのことではないけど、ヤスがヨコにかなりひっつくようになったこと。




なんとなく、ヨコとマルが付き合ってるのは感じてたけど


喧嘩でもしたのか？



2人とも秘密主義やから、そこんところは全く聞いてない。



仕事に支障がないならええや、って


いつもなら思えるのに



マルのことだけは、昔から流せない自分がいる。




とりあえずメシでも誘ってみよう。



レコメン終わりに声をかける。



紫「おつかれ、マル、飲みに行かへん？」



橙「あ〜〜…ごめんなぁ信ちゃん。


ちょっと…お腹の調子が悪くて飲めなさそうなんよ。」


ごめんな、って笑うマルは弱々しい。





笑顔の裏に、何かある。





紫「や、別に飲まなくてもええねん。


マルと話がしたいだけ。あかん？」


マルの顔がみるみる青ざめていく。



橙「俺、ちゃんと仕事できてなかった？

みんなに迷惑かけてもうた？


ごめん、ごめんなぁ信ちゃん…ごめん」



過呼吸気味になっていくマルに驚いて


安心して欲しくて抱き寄せた。



紫「ちゃうねん、怒りたいわけちゃう。


マルはちゃんとやってるから安心し？


大丈夫やって、俺を信じろ。」



抱きしめたマルの体は


予想を遥かに上回るほどに痩せていて


ふくよかだったお腹も病的に凹んでいた。




少しずつ落ち着いて、そのまま意識を飛ばしたマルを


マネージャーに預けるなんてことができなくて


俺の家で一緒に降ろしてもらった。



コートやら何やらを脱がせると、何かが落ちた。

とりあえずマルをベッドに寝かせると



それを拾う。紙切れと、千切れたプレスレット。




【マルへ


ごめんなさい。


あんな風に会うつもりやなかったんです。



二人でちゃんと話してほしかったのに、


あんなことになってごめんなさい。



でもマルに返すつもりはありません。



横ちょに寂しい思いをさせたマルが悪い。



俺が幸せにするので、諦めてください。】




彼奴がポケットに忍ばせたんやな。


マルは気づいていないみたいやった。




俺はメモとブレスレットを丸めて


ゴミ箱に捨てた。

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