きみとぼくと【∞／短編集】6

またいつかどこかで【黒×紫】 ページ35

○一般人





大学へ入学して、



ヨコと別れて、１ヶ月が経った。




ヨコは最後に初めて涙を流して



黒「遠距離なんてつらいだけやし、縛ってしまうだけやから別れよ。」



紫「なんでなん？！俺遠距離でも大丈夫やで？

……俺のこと、嫌いになってもうたんか…？」



黒「…嫌いになれたら、どんなに楽やろうな。



俺にはお前だけや。」



紫「じゃあなんで、」



黒「お前は新しい世界に飛び込む。


そこに俺は要らんねん。




…もしも俺らが運命で結ばれているなら、また何処かで会えるから。


だから、今は…」



あんな顔で、声で、



あんなことを言われたら俺にはどうすることもできなかった。





一か月経って、1人暮らしにも大学にもバイトにも慣れた。





色んな人との出会いがあるけれど、



ヨコに勝る人なんているわけなくて。





こんなんじゃアカンって



出会う人を全て好意的な目で見て



そうすればするほど、ヨコに会いたくて。






バイト帰りに疲れた体を引きずってアパートに戻る。


最近はご飯を作る気力も、買いに行く気力もなくて


みるみるうちにやせ細ってしまった。




俺の部屋の前にいる人に警戒しながら鍵を取り出す。



鍵穴に入れて、回して……




その瞬間、自分の中でなにがか繋がって

火花が散ったようにチカチカして




気づけば、その人を抱きしめていた。




紫「ヨコ？ヨコやんな？


会いたかった…！」



黒「気づかれてへんのかと思ったわ。笑


ヒナ…」



久しぶりの温もり。


忘れたことのない、大好きな温もり。におい。



黒「思った通りこんなに痩せて…

ちゃんと食うてるん？ほれ、弁当買ってきたから一緒に食べよ。」


紫「なんで？会われへんて…」



黒「こっちに転勤が決まったんよ。


あの時は、どこに行くかわからへんかったから、区切りつけといた方がええなと思って。」


紫「ここで働くん？！」


黒「せやで？ヒナの大学の近く。」


紫「また一緒に居られるん？」


黒「そうやな。

運命は、俺らを離さなかったな。」


紫「やけに早い『またいつか』やったな。笑」



黒「嫌やった？」



紫「全然。」



黒「知っとる。」



自然と唇が重なって



懐かしいその感覚に、涙が溢れる。





「運命は、俺らを離さなかったな。」





この言葉が、俺を包んで



未来を、明るく照らしてくれた。





ヨコの存在は、俺の明日。

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