きみとぼくと【∞／短編集】6

浄化【橙×青】◎ ページ32

青「はっはっ、あっん、あ」


橙「……っ、いい、」



薄暗い部屋の中で



ベッドが軋む音と、肌がぶつかる音が響いて消える。



悲鳴のようにも聞こえる吐息は



お互いがお互いを興奮させている。







俺らは歪んでいる。




愛する人でなくても、快楽を与え合う偽りの幸福を知ってしまった。




それはまるで悪魔のように




甘く、熱く俺たちの感覚を麻痺させていく。






恋が叶わないと悟ったその瞬間から







「本当の愛」なんて概念は崩れ去って




「偽りの繋がり」だけが強くなっていく。




大倉に振られた俺を




村上くんに振られたマルが慰めた。





2人で飲み明かしたその夜、俺らは堕ちた。




キスだけはしない、という契約を交わして。





あれから何度夜を過ごしただろう。






だけど、最近なんだかおかしい。




前は目を瞑って、「信ちゃん」と呟いていたマルが




いつの間にか言わなくなって、目を開けて




俺の瞳を捉えている。




その度に変な情感が沸き起こって




快感が強くなっているのだ。





そして、今日も



俺の目を見てくしゃくしゃと髪を撫でる。



心がザワザワして、不思議な気持ちになる。




橙「、章大、そろそろいい？」


青「っ！」




覆い被さってきたマルが耳元で


初めて俺の名前を呼ぶ。




その瞬間、驚くほどの快感が全身に溢れて



俺はそのまま達してしまった。




朦朧とした意識の中で、お腹が熱くなって



唇が柔らかいものに啄ばまれる。



青「マ、キス、やっ、」



悲しそうな顔をしたマル。



橙「ごめん、章ちゃん…



俺のこと、好きになって。…堕ちて。」



強引にされたキスが深くなって



俺はもういたたまれなくて。






でも、嬉しい。




歪んだ愛が、純な愛に浄化されるなんて




そんなこと、許されるのだろうか。





でも俺は、今



愛に満ちた幸せを




ほんの刹那でも感じてしまったから






たとえ許されなくても




たとえそれが偽りであっても






信じることしかできないのだと






彼の心臓の音を感じて悟ったのだった。

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