嫌いな幼馴染の彼女役をすることになった。(4) (ページ35)

今日:2 hit、昨日:17 hit、合計:125,470 hit

183% ページ35

「矢島さんの気持ち全部分かるってわけじゃないけど、共感できるところはあるよ。私も彼とは中学のころに付き合って、でも高校が離れちゃって不安だったし、今も不安。寂しいよ。一緒にいられる矢島さんたちが少しうらやましい」

委員長の言葉に胸がチクチクと痛む。

一緒にいられるって確かにそれだけで十分幸せなのかもしれない。

「この不安は誰のせいでもないと思う。もしかしたら私だけじゃなくて彼も不安かも。寂しいかも。本当のことはわからないけど、不安ってことは好きってことでしょ？取られたくない、離れたくない、ずっと一緒にいたいってこと、ね？」

委員長はそう言って私の目を優しく見つめた。

そうだよね。
知ってる。わかってる。

なんでって思う理由は全部好きだからなんだよ。

「きっと百瀬くんも好きだから意地悪しちゃうんだね」

「･･･でも、恥ずかしいことはしてほしくない」

しかもあんな人前で。
さとみにとってはキスはいろんな子と何回もしてきたかもしれない。

でも私はさとみが初めてで、さとみとしかキスしたことがない、特別なものなんだよ。
誰かに見てほしい、見られても平気、なわけじゃない。

「百瀬くんも本当はわかってるよ。クイズであんなに矢島さんのこと知ってたんだもん」

確かに第1ステージのお互いのことに関するクイズではさすがにゾッとするほど正解だった。

でも、そんなにわかってくれてるなら尚更だよ･･･

膝の上でギュッと握りしめた私の手を委員長がそっとほぐしてくれる。

「百瀬くんが分かっててやったってことは譲れない何かがあったんじゃないかな？確かに百瀬くんは矢島さんのことをからかうのが好きなんだと思うよ。それは矢島さんのことが好きだから構いたくなっちゃうんだよ。でも、それとは別に何か意味があるんじゃないかな？」

「意味･･･？」

「百瀬くん、矢島さんが泣いてるとき本当に辛そうで悲しそうだった。そんなつもりじゃなかったんだよ。何かしようとしてちょっとだけ二人の考えがうまくはまらなかっただけ。百瀬くんも普通の人間。他人の頭や心を覗けるわけじゃないから失敗しちゃうこともあるよ」

委員長の言葉に鼻をすすった。
全てに納得したわけじゃないけど、その場限りの慰めの言葉を並べただけじゃない、本当にまともな意見。

それを聞いて少しだけ落ち着きを取り戻せた。