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ソワソワと窓の外を眺めていると、突然首の後ろに手が触れる。びっくりして振り返ると、険しい顔つきの智実さんがじっと首元を睨みつけるように見ていた。
「ど、どうかしましたか?」
「その湿布どうしたの?」
「あ、いや、これは・・・」
昨日のことを思い出して、顔に熱が集まる。お酒のせいか智実さんは昨晩のことを覚えていないらしい。
恥ずかしくて顔を俯かせていると、突然、手をひとまとめに押さえられ湿布を剥がされた。
「な、に、これ・・・」
目を見開かせる智実さん。痛いと声をあげたほど強く噛まれたから、きっとくっきり跡が残っているのだろう。
「美詞、何これ?どういうこと?まさか、伽、あいつ・・・」
伽?どうして瑠生の名前が出てくるのか。
尋ねる暇もなく智実さんは私を背もたれに押さえつけた。
「美詞はどこにもいかないよね?大丈夫。こんな・・・こんな噛み跡で婚約破棄になんてさせないから。離さない。罰を受けるのはアイツだけだ」
「え、婚約破棄?なんの話ですか?」
「別にいいんだよ。伽に無理やりやられたんだよな?無理やりなんて外道だよな」
「ち、違います!これは、智実さんが昨日酔われて・・・それで、その、ソファで・・・」
また昨日の記憶が蘇ってブワッと顔に熱が集まる。
「昨日・・・ソファで・・・・・・」
少し間が空いて、智実さんは勢いよく離れていった。顔を両手で覆って俯かせる。隠しきれない耳が真っ赤だ。
「ごめん。外道は俺でした・・・」
ボソッと小さく呟いた智実さんの声色には昨晩のことを思い出したのか、覇気のなさが伺えた。
「げ、外道だなんてとんでもない!」
「だって、美詞が成人するまでは手は出さないって約束したのに・・・」
その言葉に私も思わず黙る。これは手を出してない内にカウントして大丈夫だろうか?
いいや、昨日は智実さんも疲れていたに違いない。
「昨日のことは気にしないでください。智実さんもたくさん飲んで、いつも以上に酔われていたようですし、これくらいどうってことはありません」
恥ずかしさをこらえつつ私はそっと首の噛み跡を手で隠した。
智実さんはこちらを一瞥すると、もう一度「ごめん」と言って車を発進させた。
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作者名:まるたちばな | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/novel/marutatiba1/
作成日時:2020年12月25日 20時