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重岡side
多分、相当切羽詰まった顔しとったんやと思う。
着替えた後にナースステーションを見れば状況を知らない小瀧がPCへの打ち込みの手を止めてきょとんと俺を見とって、
「っ誰か先生急いで救急行かへんかったか?」
小「あぁ中間先生がさっき、どうしたん?」
「、なんか呼ばれた、小瀧はこっちよろしくな」
おん、分かった気をつけてな、なんて言う小瀧の顔見てこれが正解やと自分で自分を納得させた。あの日誰よりもAちゃんとの別れを惜しんだこいつが、「二度と会えへんけどそれが幸せやんな?」と意味も分かってないであろう彼女に笑顔を向けてたこいつに、
今の現状を簡潔に話す勇気は俺は持ち合わせてない。
「大倉先輩!」
大倉「重岡!」
気付けば救命救急病棟にいて、気付けば処置室のドアを開けてる。
ピンと張りつめたような空気感と、
大倉「たった今、ROSC(心拍再開)、SpO₂92」
規則正しく鳴り続ける電子音。
「…Aちゃん」
大倉「一命は取り留めた。重岡、ルートもう一本増やして」
「はいっ」
近寄る前に見えてた。嘘だと思った。勘違いだと信じたかった。
中「体温も36.1、さっきより上がってきました」
大倉「とりあえず心エコーやろう、」
いつも思うねん。
なんでこんな時に冷静でおれるんやろうって。
気付けばしっかりとルートを取って、大倉先輩のやる心エコーの補助に付けてる自分がいる。
こんなに怖いのに、手さえ震えへん自分。
大倉「Aちゃん、強いなぁ。ずっと頑張ってくれてるもんな。」
偉いな、凄いなって手を動かしながら話しかける大倉先輩と、俺と同じように無言の中間先生。
やって、
「なんで、こんな、」
大倉「里親にも虐待されとった。動かんくなって慌てて救急連絡してきた」
あの時よりも、ずっと残酷な跡が刻まれていた。
やせ細ってぐったりするAちゃんに付けられた、生きてる証だけが苦しくなるほど鳴り続けている。
大倉「耳聞こえるようなったんやな、」
褒め続けていた大倉先輩は、そこで口を結んだ。
聞こえるようになったことを純粋に喜べないのは、
何故だろうか。
中「凄いなぁ、ホンマに」
大倉「なぁ?心臓もちゃんと動いとるな、後遺症、残らんとええけど」
「時間的には、」
大倉「6分の心停止。」
6分。
中「時間的には厳しいけど…」
たった6分。
されど、6分。
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maru_(プロフ) - neさん» リクエストありがとうございます!!次のお話で書かせて頂きますのでお待ちいただけると幸いです!!! (2023年4月7日 23時) (レス) id: 8a37c499f2 (このIDを非表示/違反報告)
ne - いつもお話楽しく見てます!リクエストで主人公が便秘になってしまい浣腸されるお話がみたいです。聴診の診察から嫌がる形でお願いします。先生は淳太くんでお願い致します。これからもお話楽しみにしてます! (2023年4月7日 15時) (レス) id: 438460ae6c (このIDを非表示/違反報告)
maru_(プロフ) - 実玖さん» 実玖さんありがとうございます!!そう言って頂けると本当に嬉しいです;;更新頑張るのでお暇な時にでも読んでください!! (2023年3月14日 21時) (レス) id: 8a37c499f2 (このIDを非表示/違反報告)
実玖(プロフ) - maru_さんの書くお話大好きなので、新作嬉しいです!更新楽しみにしてます♡ (2023年3月13日 17時) (レス) id: cf7a1990a1 (このIDを非表示/違反報告)
maru_(プロフ) - なぎちょんさん» なぎちょんさんありがとうございますт · тそう言っていただけると本当にやり甲斐に繋がります、頑張るのでこれからも読んでいただけると幸いです! (2023年3月9日 20時) (レス) id: 8a37c499f2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:maru_ | 作成日時:2023年3月9日 17時