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全国大会を目の前にして、俺は敗れた。
最後のシュート
俺がパスを出さずに、自分でゴールを決めていたら全ては変わっていたかもしれない。
自転車がやけに重く感じる。
俺が、俺が今までやってきたサッカーはここで終わっていいはずじゃなかった。
やっぱり俺は、凄くなんてなれないんだ。
気がつけば視界は歪んでいて
地面に丸い影が出来ていく
「くっそ」
暗い気持ちに後ろ足を引かれながらも家に着く
母さんが作ってくれた豚カツを家族全員で
一番最初に食べ終わった父さんがテレビをつけた。
「続いてのニュースです。」
「大人気アイドルCocoroが活動休止を発表しました。」
俺の手が止まる。
「え、」
試合に負けた。そんな日にサッカー以外で俺が憧れたアイドルが活動休止を発表。
受け入れられなかった
俺がここまで自分を信じてやってこれたのは全部サッカーが好きだからだけじゃない。
彼女がいたからだ。
俺が中学生の時に、彼女はデビューした。
その類い希なる容姿と歌声を持った彼女が有名になるのそんな遠くなかった。
俺が彼女を知ったのは、まだ彼女が無名だった時
《めちゃくちゃ綺麗な子が俺らの試合見てた!》
試合後にチームメイトの誰かが言った。
そんな子いたんだ、くらいの感情。いつも通り支度を終えて家に帰るはずだった。
自転車置き場の入口の鉄格子によっかかる女の子
すごく綺麗な子だなぁ、
もしかしたらあの子が、チームメイトの言ってた子なんだろうとすぐ分かるくらい本当に綺麗だった。
浮世離れした、この世に存在しないんじゃないかって思い込んでしまう。
その時、バッチリ目が合う
『あっ、』
自惚れじゃなくて、俺を見たその子の瞳が俺を待っていたのだとわかる。
寄りかかってた体を起こして俺へと近づいてくる。
呼吸が早くなるのがわかる。
てか、息ってどうするんだっけ
いきよいよく彼女は俺の両手を掴んでグッと近くなる距離
『貴方はもっと凄くなれるっ!』
キラキラした瞳で俺を見つめた。
『私、楽しみにしてるから!』
そう言って去っていった彼女を次に見かけたのはテレビの中だった。
いつも彼女を見るだけで励まされた。
それなのに、
あの日俺が俺を信じられる魔法をかけてくれた彼女は俺の全国大会という目標と共に消えていった。
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(名前)(プロフ) - 😎👍 (2023年1月17日 19時) (レス) @page12 id: 6868ad981d (このIDを非表示/違反報告)
もも - めっちゃおもしろいです!最高や…。 (2022年12月28日 16時) (レス) id: 010901fb4f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:やまびこ | 作成日時:2022年12月22日 23時