±7 勢ぞろい ページ7
「神尾ー!」
三人で話していると、背後から神尾を呼ぶ声が聞こえてきた。振り返ると彼と同じ黒いジャージを着た男子達が近づいてくる。
「先に教室出て行ったと思ったら、ここにいたのか」
「おう!橘さんから頼まれごとがあって、ちょっとな」
同じジャージを着ていることから察するに、テニス部の仲間だろうとAは考えた。
「アキラ、飯はまだだよな?ってあれ、その子は」
「…だれ?」
頭にタオルを巻いた男子とネイビーブルーの長髪の男子が、Aに気付くと他の黒ジャージの男子達もAに視線を向ける。
「ちょうど良かった!みんなに紹介しちゃおっと。この子は、転校生のAAちゃん。同じクラスなの」
「あーそういうことだったのか。どうも見ない顔だなと思ったわけだ」
タオルの彼は、納得したような表情でそう言った。
「よろしくね。神尾くんと同じジャージ着てるってことはみんなテニス部?」
「うん、そうよ。こちらが石田鉄くん、その隣が伊武深司くん、そして桜井雅也くん。神尾くんの隣にいるのが、森辰徳くんと内村京介くん」
皆は杏の紹介に応えるように、よろしくと軽くお辞儀をした。
Aも続いて、こちらこそとお辞儀を返す。
「あと、今ここにはいないんだけど、私のお兄ちゃんも男子テニス部で部長なの」
「お兄さん、部長なんだ!すごいね」
そういえば、最初会った時お兄さんを探していたっけ。お兄さんもテニス部でまさか部長だったとは。
世間って狭いなぁ。
*
「ただいまー」
お弁当を持ってきていなかったAは、あの後惜しみつつも皆に軽く挨拶をして、やむなく帰宅したのだった。
しかし転校初日からたくさんの人に出会えたなぁ。
杏と友達になることができ、クラスメイトの人達とも打ち解けることができた。
まさに、絶好調のスタートだとAは喜びに満ち溢れていた。
今日の出来事を日記に綴ろう。
そう思ったAは、鞄を開いて日記を探す。
すると、手にふわふわとした感触がした。
「あっ、くまちゃん。完全に忘れてた」
はやく持ち主が見つかると良いな。
もしかしたら、実はもう持ち主に出会っていたりして……
そんなことを考えながら、熊のキーホルダーを鞄にそっとしまい、Aは今日の出来事を日記に綴った。
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作者名:円山 丸 | 作成日時:2019年10月29日 21時