プラスとマイナス【テニスの王子様】 (ページ1)

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±1 後ろ向きより前向きにページ1

三月も終盤に差し掛かると、街中は春休み真っ只中の学生たちで溢れかえっている。
AAもその内の一人のはずなのだが、彼女の過ごす春休みは悠長なものではなく、かつてないほど慌ただしいものとなっていた。

「不動峰中学校？」

母から手渡された学校紹介のパンフレットの表紙に、黒く凛々しい文字でそう書かれていた。

「四月から通う学校よ。引っ越しの荷解きが終わったら、学校挨拶、制服採寸にも行かないとね」
「ごめんな、A。俺の転勤のせいでせっかくの春休みが大忙しで」

引っ越しで大忙しの状況でも、冷静にやるべき事を効率よくこなしている母。
反対に引っ越しの荷解きに加えて、仕事の手続きや準備と、猫の手も借りたいと言わんばかりのあわてふためいた状況の父。
なんとも対照的な両親である。

「なんというハードスケジュール…！」

春休みが始まってすぐに、Aは父の転勤で東京へ引っ越してきた。
引越しと同時に転校が決まるのは必然であり、二年次から不動峰中学校へ転校することが決定した。

転校──という言葉で思い浮かぶことといえば、友達との別れや慣れ親しんだ場所から去りゆくことの悲しさ、寂しさという感情が一般的だろう。

しかし、別れがあれば出会いがある。

Aは、それ以上に新たな場所で始まる生活、新たな出会いに対して期待感に胸を膨らませていた。

しかも、引っ越し先は大都会東京。
もともと東京に対する憧れが強いAにとって、東京の学校へ転校することは吉報だった。
遊びに行きたい所がたくさんで、放課後や休みの日にどこから遊びに行こうかと今から考えてしまうくらいに。

と言いつつも、もちろん寂しさがあったのも事実。

クラスの皆が開いてくれたお別れ会の後、皆の手紙を読んで泣いてしまったのだ。

でも、それは誰にも内緒の話と心に決めている。

後ろ向きな気持ちでスタートするより、前向きな気持ちでスタートした方が絶対良いに決まってるから。