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それにしても服が張り付いて気持ち悪い。思わず渋い顔になりながら上着を絞る。替えの服ごと濡れちゃったし、どうしようかなぁ。肩衣だけだと腕が日焼けしそうだ。
『……何かついていますか?』
やけに七松先輩がこちらをガン見しているので、思わず背中や腕を確認する。もしかして頭? 濡れた髪をかき上げて確かめるけど、雫が落ちてくるだけ。それにしても、本当に参ったなぁ。
むすっとした顔で喜八郎が近づいてくる。七松先輩と私の間に立つと、自分の上着を乱暴に私の肩に被せてきた。
『あ、ありがとう……怒ってるの?』
喜八郎の温もりが伝わってくる。しかしその乱暴な手つきに恐る恐る聞くと、喜八郎はため息をついた。決して目を合わせようとしない。ただ、耳打ちするようにそっと顔を近づけた。
「もう少し警戒しなよ。Aは女の子で、僕たちは男なんだから」
喜八郎が顔を離す頃には、私の頬が火をつけたように赤くなっていた。
ぴったりと張り付いた服。素肌を晒した肩衣。雫を垂らす髪。
自分がどんなにだらしのない姿をしていたかに気がついてしまった私は、狼狽えて顔を上げた。
興味津々でこちらを見つめる七松先輩。
顔を赤らめて顔を逸らす竹谷先輩。
相変わらず不機嫌そうな喜八郎。
中在家先輩が先ほどからこちらを見ないようにしている理由も何となく分かった。
『時間もあれですし、い、行きましょうか…………』
「はい!」
喜八郎の上着をぎゅっと握りしめて、私は声を絞り出した。
一年い組の四人だけが元気よく返事をしてくれた。
恥ずかしいー!!バカバカ、私の大バカ者!
再び出発したところで、私の心は嵐のように荒れていた。自分の無頓着さにも呆れるし、七松先輩はともかく竹谷先輩と喜八郎まであんな顔をするなんて。
恥ずかしいだけじゃない。
さっきの喜八郎の言葉が脳の中で響いている。
今まで忍たまのみんなのことは、同級生や先輩後輩という関係性でしか見ていなかった。けれどそれって私だけだったのかな……?
もしテストに合格できたら、私はくの一教室に戻る。そうしたら色を仕掛けられる側と仕掛ける側、すなわち男と女という立場に戻るのだ。
自分が今まで忍たまのみんなにしてきた行動を振り返って、ますます顔が熱くなるのを感じる。
記憶を取り戻したからか、私の忍たまへの意識が少しずつ変わっているのかもしれない。
とにかく今は、この悩みを聞いてくれるだろうくの一教室のみんなに会いたくて仕方がなかった。
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メロンパン(プロフ) - みんながわい”い”ーー!!!😭 (2022年11月3日 20時) (レス) @page16 id: c77e52a74c (このIDを非表示/違反報告)
まみむー(プロフ) - あいさん» ありがとうございます……! (2022年4月27日 0時) (レス) id: af895ee0d7 (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - 初コメです!! これ面白いです! 続き頑張ってください (2022年4月13日 8時) (レス) @page44 id: 4bcda9126d (このIDを非表示/違反報告)
まみむー(プロフ) - 愛衣さん» 愛衣さん、いつもコメントありがとうございます!読んで貰えてこその小説ですので、愛衣さんのような方がいてくださって本当に嬉しいです(*^^*)コロナに負けずに頑張りましょうね!これからもよろしくお願いしますm(_ _)m (2021年6月18日 23時) (レス) id: 53993a59b7 (このIDを非表示/違反報告)
愛衣(プロフ) - 長くなって申し訳ございません!!これからもずっと応援しています!大好きです!!!!更新頑張ってください!! (2021年6月18日 22時) (レス) id: 67408eab69 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まみむー | 作成日時:2021年6月5日 19時