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息を吹きかけた羽毛のように、私とタカ丸さんの体はふっとんだ。地面に落ちた衝撃で背中が痺れ、肺の息が全て吐き出される。しかしそれらの痛みはなかった────感じなかったというべきか。
ああ、まずい。以前にも経験のある、体の中から焼かれているような痛み。脇腹を押さえると既に服はじっとりと濡れていた。冷や汗が噴き出して来る。
「Aちゃん! 大丈夫⁉」
少し離れたところで倒れ込んでいたタカ丸さんの声が聞こえて、私の意識は現状に引き戻された。そうだ、まだ私にはやることがある……!
『ちょっと掠っただけです! 早くいきましょう!』
無理やり身を起こし、集合場所へと再び駆ける。火縄銃を撃った忍者に追いつかれたら、戦える自信がない。けれど今は、タカ丸さんを無事に送り届けないと。それまでは、倒れる訳にはいかないのだ。
行きの何倍も時間がかかった気がした。それでも私とタカ丸さんは何とか息も絶え絶えに、暗い廃寺へと辿り着いた。
「はぁ、はぁ、着いた…………!」
タカ丸さんが疲れと嬉しさの入り混じった声で言う。奥からは既に帰ってきている三人の声も聞こえた。
「私がせっかく助けてやったのにその言い方はないだろ! 感謝の気持ちはないのか!」
「ふん、この私の見事な戦輪裁きで相手を蹴散らすところだったのだ! 助けなど求めておらぬわ!」
あー、納得。三木エ門が滝夜叉丸を助けたのね。
二人とも今更そんなことで喧嘩しているなんて…………私はもう止める気にもなれなくてため息をついた。何だか、一気に力が抜けてくる。アドレナリンが切れたのか痛みまで戻ってきた。
『痛ぁ…………』
思わず柱に寄りかかってずるずると座り込む。もはや階段を上がる気力も残っていなかった。押さえた脇腹からはまだ血が流れていて、思わず声が漏れた。
「Aちゃん⁉」
タカ丸さんが慌てて駆け寄ってくる。傷口を調べるように触られて、体の中が滅多刺しにされているような痛みが走った。
『うっ…………』
「何でこんな傷…………みんな、灯り持ってきて! 急いで!」
「やっと帰ってきたか、遅かったなぁ」
「どこで道草くって…………っておい⁉ 酷い怪我じゃないか!」
「A!」
痛みに思わず顔を歪める。霞む視界の中で、次々に駆け寄ってくる仲間の姿は見えた。灯りに照らされた自分の体は思った以上に真っ赤でびっくりした。こんな状態で、走っていたなんてね。
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メロンパン(プロフ) - みんながわい”い”ーー!!!😭 (2022年11月3日 20時) (レス) @page16 id: c77e52a74c (このIDを非表示/違反報告)
まみむー(プロフ) - あいさん» ありがとうございます……! (2022年4月27日 0時) (レス) id: af895ee0d7 (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - 初コメです!! これ面白いです! 続き頑張ってください (2022年4月13日 8時) (レス) @page44 id: 4bcda9126d (このIDを非表示/違反報告)
まみむー(プロフ) - 愛衣さん» 愛衣さん、いつもコメントありがとうございます!読んで貰えてこその小説ですので、愛衣さんのような方がいてくださって本当に嬉しいです(*^^*)コロナに負けずに頑張りましょうね!これからもよろしくお願いしますm(_ _)m (2021年6月18日 23時) (レス) id: 53993a59b7 (このIDを非表示/違反報告)
愛衣(プロフ) - 長くなって申し訳ございません!!これからもずっと応援しています!大好きです!!!!更新頑張ってください!! (2021年6月18日 22時) (レス) id: 67408eab69 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まみむー | 作成日時:2021年6月5日 19時